2020 Fiscal Year Research-status Report
トルコにおけるウイグル女性のイスラム的共生社会の創出に関する研究
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20K13444
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中屋 昌子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30838850)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスナショナル / 共生社会 / ディアスポラ / トルコ / ウイグル / イスラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、トルコに信仰の自由を求めて移住したウイグル女性に焦点を当て、新疆ウイグル自治区での信仰生活の実態、移住先トルコでのイスラム的共生社会の創出過程を明らかにすることである。さらには、本研究はウイグル女性を事例として、ムスリム女性のイスラム的共生圏の特徴を学際的視点から解明することにより、ムスリム女性への偏見を是正し、グローバル社会において喫緊の課題となっている非ムスリムとムスリムとの共生社会構築への貢献を目指すものである。 本研究の目的を達成するために、初年度の2020年度では、ムスリム女性の国際移動、中国の宗教統制の経年変化に関連する先行研究の文献調査、およびトルコに居住するウイグル女性への聞き取り調査を行った。文献調査によって、改革開放以降、新疆ウイグル自治区のイスラム復興が高まったが、新疆ウイグル自治区では、宗教の統制が年々強まっていることを確認した。また、宗教統制の厳格化によって、ウイグル女性にはイスラム的服装の規定や自宅でのクルアーン学習などの制限があることを確認した。こうした厳格な宗教統制がきっかけとなり、ウイグル女性は、信仰の自由を求めてトルコに移住したということを明らかにした。聞き取り調査では、イスタンブルのウイグル女性の宗教的なコミュニティが拡大していること、そして、ウイグル女性同士のコミュニケーションは、オンラインによるチャットが主流を占めていることを明らかにした。 こうした研究の成果の一部を日本語と英語で口頭発表をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画はおおむね順調に進展している。第一に、文献調査においては、改革開放以降の新疆ウイグル自治区の信仰の自由の実態についての資料を収集することができた。第二に、聞き取り調査では、イスタンブル在住のウイグル女性の調査協力を得ることができた。第三に、同志社大学F.G.S.S.研究センターの夏期特別講座、および同志社大学一神教学際センターCISMORにおいて研究成果の一部を発表することができた。このようなことから、当該年度の研究は、計画に沿って進めることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究の推進方策は、前年度に引き続き、本研究に関連する文献、資料収集を行う。同時に、前年度の調査結果や口頭発表をまとめ、学会あるいは学術雑誌などにおいて発表をする。トルコ・中国における現地調査については、新型コロナウイルスの感染拡大の状況によって、影響を受ける可能性があるが、今年度の後半に実施できるようにする。2021年度の現地調査が困難な場合には、現地のウイグル女性とオンラインによって聞き取り調査を進めていくことにする。これについては、すでにウイグル女性の調査対象者から同意を得ている。
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Causes of Carryover |
初年度にあたる2020年度では、中国・トルコで現地調査を行い、本研究に関連する資料収集やウイグル女性への聞き取り調査の実施を計画していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって海外渡航が不可能となったため、次年度使用額が生じた。 2021年度では、引き続き、トルコ語、英語、中国語、日本語の関連書籍を購入する。調査関連のデータ資料の管理を準備するためにPC関連用品を購入する。新型コロナウイルスの感染拡大の状況を考慮しつつ、中国・トルコで現地調査を行い、文献資料の収集やNGOでの参与観察、ウイグル女性を対象に聞き取り調査を実施する。
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Remarks |
research map
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