2021 Fiscal Year Research-status Report
トルコにおけるウイグル女性のイスラム的共生社会の創出に関する研究
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20K13444
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中屋 昌子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30838850)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際移動 / ジェンダー / イスラーム / ウイグル / トランスナショナル |
Outline of Annual Research Achievements |
トルコにおけるウイグル女性のコミュニティに関する先行研究の調査を実施した。その結果、本研究課題が扱う先行研究は多いとはいえない状況であることが分かった。このような状況のなか、ウイグル女性が中国を離れるきっかけとなった中国における宗教統制に関する実態について検討した。結果、2009年のウルムチ暴動が大きな転機であることが明らかになった。2009年ウルムチ暴動をきっかけとして「新疆ウイグル自治区宗教事務条例」が改訂されたことに着目し、施行直後の1994年とそして2014年度改訂版を比較検討し、改訂に至った背景や改訂された条項内容について分析をした。また国家レベルの法令2005年度施行の「宗教事務条例」が2017年度に改訂されたことにも着目し、宗教統制がいかに厳格化されるようになったかについての比較検討を行った。これにより、宗教に関する法令は、地方において先に発出され、国レベルでは後に発出されることが分かった。全国の地方自治に比べて新彊ウイグル自治区では宗教統制が例外的に厳格化されていることが明らかとなった。特に女性では、ヒジャーブ着用の制限や子どもへの宗教的教育の制限が行われていることが判明した。2022年3月にトルコイスタンブルでウイグルNGOの協力を得てウイグル女性コミュニティの現地調査を開始した。ウイグル女性コミュニティは、トルコのゼイティンブルヌ・セファキョイ地区に集中していることが分かった。トルコイスタンブルに居住するウイグル女性は、トルコに自由な信仰の実践の場を求めて移住して来た女性が多数存在することが明らかとなった。ウイグル女性コミュニティを支えているのは、現地NGOの存在が大きいことが判明した。また、トルコイスタンブルに居住するウイグル女性は、寡婦や配偶者が宗教的理由により中国に収監されているケースが多くみられ、こうした状況や心理的側面を配慮した聞き取り調査が必要であると認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、ウイグル女性の国際移動と現地トルコにおけるウイグル女性のイスラム的共生社会の創出に関する研究を行うことを目的としている。そのためには、海外調査は必要不可欠な要素となっている。しかし、コロナ感染症拡大のために、中国・トルコ渡航が困難な状況となり、現地調査が2022年3月に1度しか実施できない状況に追い込まれた。文献調査による研究資料の補填を試みたものの、研究に直結した文献はほとんどないという結果となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染症の状況によっては、現地調査を実施できる場合には、実施する。現地に居住する研究者やNGOの協力を得て調査を実施してもらうようにする。海外渡航が困難な場合には、現地のウイグル関係者を通じてアンケート調査を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題は、ウイグル女性のトルコにおけるコミュニティの構造的特質を研究することに主眼にある。しかし、先行文献は必ずしも多いとはいえない。そのためには、海外調査(中国・トルコ)が不可欠である。世界的なコロナ感染症の拡大により、予定していたトルコ・中国での現地調査が実施しずらい状況に追い込まれている。次年度では、海外における聞き取り調査(中国・トルコ)、文献収集、論文執筆を予定している。また、本を出版し、社会に向けて発信をする。
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