2021 Fiscal Year Research-status Report
公的教育支出の配分が世代間階層移動と経済成長に与える影響に関する理論的研究
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20K13453
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
村山 悠 大分大学, 経済学部, 准教授 (20588404)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エリート教育 / 能力主義 / 世代間階層移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、公的教育支出の配分が世代間階層移動に与える影響を理論的に明らかにすることである。 先行研究において、世代間階層移動が少ない国では、暴動やストライキ、反政府デモなど政治的不安定を経験しやすいことが実証的に明らかにされている。また、所得格差が大きい国ほど、世代間階層移動は減少することも示されている。まとめると、所得格差の拡大は世代間階層移動を妨げ、政治的不安定性を高めることになる。よって、もし所得格差が拡大した場合、世代間階層移動を促すことが政府にとって重要となる。世代間階層移動を促す政策はいくつか考えられるが、本研究では子どもの能力に応じて公的教育支出を配分する政策を考えた。この政策はいわゆる奨学金のような資金援助である。能力の高い子どもへの資金援助は、子どもの学習への意欲や親の学校教育への関心を高めることにより義務教育全体の質を高めることが実証研究で明らかにされている。また、能力の高い子どもへの手厚いサポート(エリート教育)は世界的な傾向となりつつあることも示されている。これらを踏まえ、本研究は能力に基づいた公的教育支出の配分に焦点を当てた。 2021年度の研究実施計画は、前年度で構築した理論モデルに基づいてシミュレーション分析を行うことであった。得られた研究成果として、所得格差が拡大するにつれ、能力の高い子どもに多くの公的教育を配分する政策が世代間階層移動を促すために必要となることがわかった。この研究成果は、所得格差の拡大と世代間階層移動の減少を伴う国にとって、世代間階層移動を促すことで政治的安定性を高めるためには、能力の高い子どもへ多くの公的教育を支出することが重要であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、研究成果をまとめた論文を作成中であるため、おおむね順調に進んでいると考える。完成次第、学術雑誌に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
論文を学術雑誌に投稿した際に査読者から頂くコメントなどを参考にして、研究を発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
モデルの修正やシミュレーション分析に時間を要したため、物品や参考文献などの購入があまりできなかった。次年度では、これらの購入や英文校正などに使用する計画である。
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