2020 Fiscal Year Research-status Report
A theoretical analysis of markets with indivisible commodities: An approach from discrete mathematics
Project/Area Number |
20K13458
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
横手 康二 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (50802344)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 非分割財市場 / 離散凸解析 / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
一本の論文を査読付き学術雑誌に掲載した。タイトルは、「On optimal taxes and subsidies: A discrete saddle-point theorem with application to job matching under constraints」である。この論文では、離散凸解析を用いて「制約付き労働市場」と呼ばれる非分割財市場を分析した。現実の労働市場では、政府が企業に対して雇用の仕方に一定の制約を課した上で、その制約を守らせるために税・補助金を導入することがある。労働者と企業のマッチングに加えて、政府の税・補助金額も同時に考察するモデルを「制約付き労働市場」と呼ぶ。このモデルに離散凸解析におけるアルゴリズムを応用することで、社会的に望ましい税・補助金額を具体的に計算できることを明らかにした。本研究成果の重要性は、既存のマッチング・アルゴリズムをどのように修正すれば税や補助金も扱えるのかを明らかにしたという点にある。 上記研究成果に加え、非分割財市場の代表であるオークションについての研究も行った。タイトルは、「Restricting bid withdrawal: A new efficient and incentive compatible dynamic auction for heterogeneous commodities」であり、研究代表者が所属する早稲田大学高等研究所のworking paper として公開している。この論文では、Ausubel (2006)が導入した既存のオークションに数学的な誤りがあることを明らかにした。その上で、当該オークションが機能するためには、離散数学におけるいくつかの不等式系を満たす必要があることを明らかにした。本研究成果は、複数の財を扱うオークションの記述をより正確にしたという意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス感染症の影響で、予定していた国際学会でのプレゼンテーションがキャンセルになるなどの影響はあった。しかし、個人で進めている理論分析については、論文の発表・雑誌掲載といった成果を予定通りに達成できた。そのため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、二つの研究テーマを軸に研究を進める。 一つ目の研究テーマ は、準線形性を課さない制約付き労働マッチング市場において税・補助金額を発見するアルゴリズムの解明である。1年目の研究で導入した税・補助金額の発見アルゴリズムには、一つの欠点がある。それは、労働者の効用に「準線形性」と呼ばれる特殊な仮定を課した点である。この仮定は、労働者の選好に所得効果がないことを含意しており、現実の状況にはそぐわない場合が多い。2年目の研究では、この仮定を落としたケースにおいて、税・補助金額を発見する新たなアルゴリズムを定式化することを目指す。2021年度内にworking paperを公開し、学会での報告も行うことを予定している。 二つ目の研究テーマは、選好が無差別性を有する非分割財市場への離散数学からのアプローチである。公共機関が提供する非分割財(例:公立学校の受け入れ枠)の分配を扱う場合、公共機関の側では財の上に厳密な選好を持っていないケースがある。これを「選好が無差別なケース」と呼ぶ。先行研究では、無差別な選好を扱う場合、その選好を任意の形で「厳密な選好」に記述し直し均衡分析をするという手法が支配的である。しかし、この手法では、財を受け取る側にとって最適な結果が得られないといった欠点があることが知られている。一方、離散凸解析で用いられるアルゴリズムでは、無差別性を伴う問題を別のものに記述し直すといったプロセスを行わずに均衡を発見する。この事実に着目し、既存の均衡発見アルゴリズムの欠点を克服する新たなアルゴリズムの解明を目指す。2021年度の後半にはworking paper を公開することを計画している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、主に旅費に関して大幅な計画の変更が生じた。使用計画として、2020年度から2021年度に延期となった学会の参加費に充てることと、在宅での研究活動において追加で必要になる物品の購入費に充てることを想定している。
|
Research Products
(3 results)