2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K13460
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
二本杉 剛 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (10616791)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 罪回避行動 / 性差 / 文化差 / イギリス / 韓国 / 行動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
向社会行動は人間社会にとって極めて重要である。公平性に基づく向社会行動については性差があることが知られている。さらに、公平性に関する性差は経済発展などの社会的要因と関係すること、また生物学的(神経科学的)な違いがあることも明らかになり、学際的に研究されている。しかし、公平性だけが向社会行動を促すわけではなく、人間は相手の期待を裏切ることに罪悪を感じるため向社会的に振舞うことも知られている。これは罪回避行動と呼ばれる。罪回避行動は日常的な向社会行動であるにも関わらず、未だ十分な研究がなされていないため、ここでは罪回避行動を対象として、特に性差について深く研究することを目的としている。
本年度は、昨年度に実施したfMRI実験の延長として、日本人以外を対象にした行動実験を実施した。日本と同じ程度の社会経済水準(一人当たりGDP)である国から東洋を代表して韓国人、西洋を代表してイギリス人を対象とした。具体的な課題としては、他者から期待されていることがわかる状況において、相手の意図に反して裏切るか、協力するかを被験者は選択する(信頼ゲームを拡張した課題)。45回のchoice setを用意し、数値のパターンを適切に変更し、何回も意思決定することで、個人の罪悪への感度を計測する。この個人の罪悪感への感度に、文化差、性差があるのかを検証した。結果については、①韓国人、イギリス人いずれも、男性の方が女性よりも罪回避行動をする、②イギリス人は日本人の結果と同じく、男性には罪回避行動の認知基盤として規範があったが、韓国人では負の感情(不安、心配など)であることが明らかになった。なお、これらの結果は国際学術雑誌において公表した。現在は、これらの結果を社会に活用する手法について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に作成した罪回避理論に基づいた実験デザインを用いて、日本以外の国でも行動実験を実施できた。このような文化差にまで研究を広げることは、当初計画にはなかったことである。そのため、この結果が国際学術雑誌に掲載されたことは、当初計画以上の進展だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
日本人、韓国人、イギリス人を対象にした実験では、罪回避行動は男性優位な行動原理であることが示された。この結果を、実社会に活用する方法を今後は検討したいと考えている。具体的には、ナッジ手法を用いて何らかの行動変容を考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため学会出張などが抑制され資金を計画通りに使用できなかった。今後は、学会活動も再開されつつあるため、これらに積極的に参加するとともに、今後の発展につながる研究のためにも資金を活用したい。
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