2020 Fiscal Year Research-status Report
貨幣と公共財の一般均衡理論研究:協力ゲーム的アプローチ
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20K13461
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
村上 裕美 関西学院大学, 商学部, 助教 (80803072)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 協力ゲーム / コア / 公共財 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公共財生産と貨幣供給の下での均衡資源配分と、それを実現する市場メカニズムの最適性や安定性について、コア理論に基づく分析を行うものである。2020年度は、研究代表者がこれまで進めてきた、有限経済の純粋交換設定下における貨幣的均衡の研究成果について、生産を導入する形で拡張を行い、公共財生産の問題を扱う準備としての経済モデルを構築した。 生産経済において、コア概念を考えることの困難さは、提携の持つ生産技術とはどのようなものであるか、という問題にある。一般均衡モデルにおける生産経済のコア収束の問題について、最も一般的な設定の下で扱った従来の研究成果は、Xiong and Zheng (2007)であるが、当該論文の意義は、提携の生産の実現可能性を明確に保証する形で、コア概念の定式化を与えたという点にある。本研究におけるコア概念は、実現可能性のみならず、提携の生産に加わる全体のインセンティブを考慮したものとなっており、本研究は生産経済のコアに関する研究を一層進展させるものとして位置づけられる。 本研究では、coalition production economy の考え方を基本とし、提携の用いる生産技術に関わる利害関係者全員の同意の下での逸脱のみを許容するという、極めて一般的なコア概念を用いて、生産経済における貨幣的均衡としての dividend equilibrium へのコア収束定理の証明を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果が得られ、その結果を2020年度日本経済学会春季大会で発表を行うとともに、英文専門誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、次の二段階に分類され、2021年度は主として(1)、2022年度は(2)について研究を推進する予定である。 (1)公共財を含む形に生産設定を拡張することで、公共財の最適供給問題と国家の財政支出・貨幣供給の問題を接続する。 (2)さらにその成果を世代重複モデルや多部門成長モデルにおいて整理し、動学分析に向けた拡張を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行のため、多くの学会がオンライン開催となり、旅費の使用計画に変更が生じたためである。2021年度のオンラインでの研究成果報告に向けた機器の購入に利用する予定である。
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