2021 Fiscal Year Research-status Report
貨幣と公共財の一般均衡理論研究:協力ゲーム的アプローチ
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20K13461
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
村上 裕美 追手門学院大学, 経済学部, 講師 (80803072)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 協力ゲーム / コア / 公共財 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公共財生産と貨幣供給の下での均衡資源配分と、それを実現する市場メカニズムの最適性や安定性について、コア理論に基づく分析を行うものである。2021年度は、昨年度の研究成果である、生産経済における貨幣的均衡へのコア収束定理を、公共財生産を含む形に拡張を行い、公共財生産と政府の財政収支を同時に考察するための諸条件を明らかにした。 公共財の分配における市場の失敗という問題について、政府の介入による解決を示したのがリンダール均衡であり、この均衡概念は、もし各主体の公共財への選好が誤りなく表明されるならば、各人に向けた個別の価格を用いた仮想的な市場を通じて、その最適な資源配分を実現できるというものである。リンダール均衡の考え方に基づき、Arrow-Debre的な一般均衡理論の枠組みの下で、均衡の存在問題やコア同値性を検討した研究としては、Foley (1970)やMas-Colell and Silvestre(1989)などが代表的なものとして挙げられる。これらの先行研究においては、生産集合が凸錐、あるいは、私的財は一財のみであるといった、極めて限定された設定に強く依存しているという問題がある。本研究では、公共財生産の利潤の取り扱いや、公企業と私企業の違い、財の種類やsatiationの有無の問題、国家による財政支出の捉え方等について詳細な検討を加えるとともに、より一般的な設定の下で、均衡資源配分とその特徴付けが可能となる条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
公共財生産を含む経済のコア収束定理について、これを可能とする諸条件は判明したが、その定式化においては当初の想定以上に詳細な検討が必要であることが明らかとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、次の二段階に分類される。 (1)公共財を含む形に生産設定を拡張するための条件を詳細に検討し、公共財の最適供給問題と国家の財政支出・貨幣供給の問題を同時に扱う経済モデルを完成させる。 (2)さらにその成果を世代重複モデルや多部門成長モデルにおいて整理し、動学分析に向けた拡張を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行のため、多くの学会がオンライン開催となり、旅費の使用計画に変更が生じたこと、また、研究成果は2022年度に英文専門誌に投稿することとしたため、その際に必要な英文校正費用を2021年度に利用しなかったことが、理由である。 これらの差額は2022年度の研究成果報告のための旅費や、英文校正費用として利用する予定である。
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