2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13464
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
金子 創 大分大学, 経済学部, 准教授 (20737639)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 搾取 / 搾取の継起性 / 異時点間資源配分 / 国際的不等価交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は「異時点間の(非)搾取的な資源配分の実現可能性の検討」,そしてそれを通じた「倫理的な評価を可能にするベンチマークの導出」である. 2020年度は,前者に関する研究として,動学的な完全競争市場モデルで資源配分が搾取的であることの定義が満たすべき,あるいは自然に満たすであろう要件(公理)について検討した.モデルが動学的である(時間構造が明示的である)場合,搾取・被搾取を分ける基準点の設定には時間視野の論点がつきまとう.例えば,搾取・被搾取関係をある一時点で見るか,主体の生涯全体を通じて評価するか,によって基準のとり方は異なるといった論点である.こうした論点を踏まえ,どのような条件のときにそれぞれの基準において搾取・被搾取関係が生成され,また継起するかといった問を検討し,今までのところいくつかの基礎的な結果を得ている.これについては京都大学などで研究報告を行った. また,後者に関する研究として,国際貿易経済環境における不等価交換に関するサーベイ論文の執筆に取り組み,国家間の資産格差や国際分業における役割(資本輸出入・労働輸出入)の固定化が生じるメカニズムと,搾取的な資源配分の問題を関連付けて整理した.これはサーベイとしてまとめたものであるが,基礎理論的なフレームワークがどの程度の応用可能性を持っているか,またそれは伝統的な国際経済に関する論点に対してどのような視座を与えるか,といった疑問に対応する研究と位置づけることができるため,研究計画の遂行にも大きく寄与するものである.なお,この論文はOxford Handbook of Economic Imperialism (Oxford University Press)に掲載されることが決まっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はCOVID-19の感染状況に伴い国際カンファレンス等で報告がかなわず,フィードバックを得る機会が限定されていた.そのために論文の改善が進まず,当初予定していた投稿のタイミングを逸してしまった. その代わりに,研究実績の概要で言及したように,関連分野のサーベイ論文の執筆,および(研究計画の後段で予定していた)より一般的なテーマに関する基礎的な結果のとりまとめ,に取り組んだ. 以上を総合的に勘案して,やや遅れていると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は既にまとまっている結果を論文投稿までこぎつけられなかったが,他方で申請段階での計画を先取りし,かつ当初の予想よりも射程の広いテーマへの足がかりとなる研究に取り組むことができた.21年度以降は,まずは前者に関しては早い段階で学術誌への投稿を目指すことになるが,並行して後者の方向性をより発展させる予定である.
特に重要となるのは,モデルをより一般的に拡張し,搾取がどのように定義されるべきかを考察することである.いくつか典型と思われるモデル例を検討し,このラインの方向性を進めたい.
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Causes of Carryover |
国際コンファレンスへの参加を通じて研究報告に対するフィードバックを得る予定であったが,COVID-19の感染状況もあり見合わせた.代わりに,分析を優先させた.2021年度以降は国際コンファレンスを含む学会への参加を積極的に進める予定で,そのための使用を計画している.
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Research Products
(4 results)