2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13464
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
金子 創 大分大学, 経済学部, 准教授 (20737639)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 搾取 / 異時点間資源配分 / 国際的不等価交換 / 搾取基準の多義性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は「異時点間の(非)搾取的な資源配分の実現可能性の検討」,そしてそれを通じた「倫理的な評価を可能にするベンチマークの導出」である. 2021年度は主に後者に関するものとして,2つの研究を進めた.第一に,国際貿易経済環境における不等価交換に関するサーベイ論文の執筆に取り組み,国家間の資産格差や国際分業における役割(資本輸出入・労働輸出入)の固定化が生じるメカニズムと,搾取的な資源配分の問題を関連付けて整理した.これはサーベイとしてまとめたものであるが,基礎理論的なフレームワークがどの程度の応用可能性を持っているか,またそれは伝統的な国際経済に関する論点に対してどのような視座を与えるか,といった疑問に対応する研究と位置づけることができるため,研究計画の遂行にも大きく寄与するものである.当該の成果はOxford Handbook of Economic Imperialism (Oxford University Press)に掲載された. また第二に,搾取基準に関する倫理的な評価を巡る歴史的な展開について学説史的にアプローチする研究を進めた.経済学の歴史においては倫理的な論点をどのように考察の遡上に載せるかという議論が多面的に展開されてきている.当該研究は,そうした歴史に裏付けられた倫理的評価の多義性と経済学の近年における実証面に関する発展との調和の可能性について検討したものと位置づけられる.なお,この成果は政治経済学・経済史学会において共通論題として報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は昨年度に引き続き国際カンファレンスへの参加がかなわなかった.他方で,昨年度に引き続きより一般的なテーマにおける基礎的な結果をまとめ,学会や研究会にリモートで参加し報告した. 以上を総合的に勘案し,上の評価と判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の進捗を踏まえて当初の計画よりも射程の広いテーマについての研究を進めることができた.こうした方向性は発展の余地を大いに残しており,22年度以降も進展を見込める論点である. モデルの一般的な拡張についての方向性と合わせて進めたい.
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Causes of Carryover |
国際コンファレンスへの参加を通じて研究報告に対するフィードバックを得る予定であったが,COVID-19の感染状況もあり見合わせた.また国内の学会や研究会への参加も基本的にはリモートが主となり,旅費としての使用が抑制できた.2022年度以降は各種学会への対面参加を進める予定である.
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Research Products
(6 results)