2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K13465
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
笠井 高人 同志社大学, 経済学部, 准教授 (90755422)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポランニー / 労働者教育協会 / 亡命知識人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバルな市民の役割を論じたカール・ポランニーの社会経済思想の源流を、イギリス時代に執筆された新資料を用いることで明らかにすることを目的とした。これは、これまで看過されていた『大転換』を執筆する以前のイギリス時代の労働者教育協会(WEA)での活躍に着目し、ポランニーの思想がどのような人的・歴史的要因によって変化・発展したのかを探求することで明らかにできるものである。さらに、そこからグローバルな市民が中心的役割を担うことで人間の生存が充足されるという福祉思想を探ることを目的とする。市民が政治経済の中心となって社会を安定させることを望む新しいポランニー像とそのグローバルな市民社会論を提示することで、人々の社会的な結びつきを重視する福祉思想として、今日の社会に如何に貢献できるのかを検討した。 研究当初は新型コロナ感染症の拡大のため、海外に渡航して新資料を集めるという予定していた研究計画通りに進めることは困難を極めた。そのため、研究計画を変更し、既刊の資料を入手し、これまで十分には分析されてこなかったオーストリアエコノミスト誌におけるポランニー思想の発展を探究した。また、当初よりも人的ネットワークに着目し、ポランニーの親族とりわけ姉ラウラ、弟マイケル、妻イロナ、娘カリ、甥ジョンをはじめ、ポランニー一族との関連および一族の大戦前後の行動を研究することで、当時の時代性とともに知識人の亡命運動の一端を明らかにした。ポランニーはグローバルな市民社会を体感している。
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