2020 Fiscal Year Research-status Report
確率過程に対する一様・高次元正規近似法の開発と変数誤差モデルへの応用
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20K13468
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗栖 大輔 東京工業大学, 工学院, 助教 (70825835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 変数誤差モデル / ノンパラメトリック回帰 / レヴィ駆動型確率場 / 非定常空間データ / サブサンプリング / ブートストラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に以下の3つの研究に取り組んだ.(1)変数誤差モデルにおける確率密度関数の推定レートの改善,(2)非定常空間過程に対するノンパラメトリック回帰の開発,(3)ノンパラメトリックな極値分位点回帰の開発. 研究(1)は,計量経済学の分野でしばしば利用される変数誤差モデルに関係する.特に,興味のある確率変数が観測誤差を伴って観測される場合に,その確率変数の密度関数を Kotlarski's identity を利用して推定する場合の推定量の収束レートの改善に取り組んだ.研究(2)では非定常時系列解析の分野でよく研究されている局所定常性をもつモデルを空間データの枠組みに拡張した.特に,非定常な空間データどうしが非線形な関係をもつ場合に利用可能なノンパラメトリック回帰モデルを提案し,回帰関数のカーネル推定量のコンパクト集合上での一様な一致性と各点での漸近正規性を導出した.さらに次元の呪いを回避するため,回帰関数が加法的なモデルも提案し,このモデルに対しても回帰関数の一様な一致性と漸近正規性を示した.更に局所定常な空間モデルの具体例についても考察し,レヴィ駆動型確率場を多変量かつ局所定常な場合に拡張し,そのようなクラスに対して本研究の結果が適用可能であることを示した.研究(3)では分位点レベルが0または1に近い場合(極値分位点)の推定を行う線形極値分位点回帰をセミパラメトリック・ノンパラメトリックに拡張した.特に,極値分位点の設定の下での局所線形推定量の漸近分布を導出し,サブサンプリング法を利用した信頼区間の構成方法を与えた.更にセミパラメトリックモデルとして極値分位点の設定の下での係数変化モデルを考え,係数関数の漸近分布を導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,変数誤差モデルと空間過程に対する新たな統計手法の提案と理論的結果を得ることができた.特に変数誤差モデルに関する研究成果は Econometric Theory に掲載が決定している.また,変数誤差モデルにおける興味のある確率変数の推定レートと信頼バンドの構成に関してより発展的なテーマについても現在研究を進めている.空間過程に関する成果についても研究成果をまとめ,国際学術誌に投稿中である.この研究についても,非定常な空間データのための統計的推測手法の開発等関連するテーマについて研究を進めており,さらに時空間データへの応用に関する研究も進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主に以下の2つの研究に取り組む予定である.(1)変数誤差モデルにおける確率密度関数の推定レートの更なる改善,(2)高次元の空間データに対する統計的推測手法の開発とその時空間データへの応用. 研究(1)では前年度に得られた研究成果を,近年開発された経験過程の解析手法を用いてさらに改善することを目指す.更に改善された結果を用いて,興味のある確率変数の確率密度関数・累積分布関数の信頼バンドの構成法を与える. 研究(2)では多変量かつ非定常な空間データを不等間隔に離散観測する場合に,標本平均を用いてから空間データの平均を推定する問題を考え,ブートストラップ法を用いた同時信頼区間の構成法を与えることを目指す.更に各地点で観測される変数の数が観測地点数よりも多い場合(高次元の場合)も想定した方法を開発する.これにより空間データだけでなく,時空間データも同じ枠組みで分析可能になる.また標本平均のみならず,標本平均の関数で表される smooth function model に対するブートストラップ法についても考察する予定である.
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大により,当初参加を予定していた国内外の学会の多くが延期またはオンライン開催となったため,旅費が計画に比べて大きく減少した.2021年度は前年度では延期された国内・国際学会の多くがオンラインまたは対面も含めたハイブリッドでの開催を予定している.助成金の使用については主にそれら学会の参加費に充てる.また研究に必要な資料として書籍の購入や英文校正の費用に充てる予定である.
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