2021 Fiscal Year Research-status Report
貨幣的一般均衡モデルにおける資産バブルを中心とした分析
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20K13471
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
早川 仁 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (70708578)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 貨幣的一般均衡 / 資産バブル / 格差 / 貨幣の偏在 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の中心的課題である、貨幣的一般均衡モデルの構築ならびにそこでの資産バブルの分析に関して、ワーキングペーパーにまとめた。論文においては、貨幣供給量の拡大の経済成長における意義を示すとともに、過剰な貨幣供給のもとで資産バブルがもたらされうることを示すことに成功した。従来の研究において、非貨幣的一般均衡モデルにおける資産バブルの発生・厚生への影響については種々の知見が得られているが、当論文で示した資産バブルはそれらとは本質的に異なる種類の資産バブルと位置づけられる。非貨幣的一般均衡モデルにおいて資産バブルの発生の根拠は経済活動の制約や摩擦であり、その発生の厚生上の一義的効果は制約や摩擦を緩和することを通じた正の効果として把握される一方、当論文においては資産バブルの発生の根拠は貨幣の偏在として観察される所得・資産の不平等に求められ、かつ、資産バブルの発生はその不平等を拡大する傾向にあることが示される。当論文は、非貨幣的モデルにおける資産バブルの分析に関して、現実の資産バブルを適切に理解できていない可能性を示唆する。 当論文はまた、資産バブルの代替的動学として、所得・消費の格差の拡大を必然的にともなう生産セクター間の生産要素のシフトを示す。すなわち、貨幣の過剰が生じている際、もし新たな生産セクターがすぐには稼働できない場合、過剰な貨幣が資産市場に流入することによって資産バブルが発生しうる。一方、新たな生産セクターへの貨幣の流入は生産要素のシフトを生じ、その時点での富裕層を利する一方、他の家計の損失を必然的にともなうことが示される。いずれの動学においても貨幣の偏在がさらなる格差の拡大をもたらすことが示される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的課題について、ワーキングペーパーとしてまとめることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においてまとめたワーキングペーパーについて学会等で報告を行い、適宜改訂を進める。当論文の分析では、貨幣供給を外生的としていることに一つの限界がある。次年度は、銀行部門による貨幣の内生的供給に関する分析を進める。
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Causes of Carryover |
学会報告による旅費の使用が想定より少なかったため。次年度は学会報告を国内外において行う計画であり、旅費の使用にあてることを計画している。
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