2022 Fiscal Year Research-status Report
貨幣的一般均衡モデルにおける資産バブルを中心とした分析
Project/Area Number |
20K13471
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
早川 仁 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (70708578)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 貨幣的一般均衡 / 資産バブル / 格差 / 二重経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の中心的課題である、貨幣的一般均衡モデルの構築ならびにそこでの資産バブルの分析に関して、昨年度にまとめたワーキングペーパーの内容について国際学会3件において報告を行い、改訂を行った。当論文の一つの学術的貢献は、新たな貨幣モデルを導入して資産バブルまたその代替的動学の発生と特徴を明らかにすることであるが、改訂を通じてこれに加え経済発展・格差の観点における学術的貢献を明らかにした。
経済発展に関する理論研究においては、Debraj Ray教授の2010年の論文"Uneven Growth: A Framework for Research in Development Economics", (Journal of Economic Perspective)において“二重経済モデル”が一つの分析枠組みとして提案される。ただし、それは非貨幣的モデルとして構築される。申請者の論文は、彼の“二重経済モデル”において貨幣を明示的に導入した理論モデルと位置づけられる。彼の“二重経済モデル”の構想は、(農村部と都市部などと想定される)経済の二つの領域における労働移動の障害の存在が所得格差を生じるというものであり、とくに一方のブームが他方に波及しない“分離された(segregated)ブーム"となることを主張する。労働移動の障害としては教育投資の存在などが想定される。
申請者の論文においては、ある種の名目価格の硬直性の想定のもと、労働移動の障害を外生的に想定せずとも、二つの領域間での労働移動が必ずしも円滑に生じないことを示す。格差に関する帰結に関しては、一方の領域のブームが単に“隔離されたブーム”ではとどまらず、貨幣的外部性を通して他方の領域の所得を減少させる効果の存在を示したと位置づけられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的課題について昨年度にまとめたワーキングペーパーをもとに国際学会3件の報告を行い、学術的貢献等について改訂を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度においてまとめたワーキングペーパーについて学会で報告を行い、適宜改訂を進める。現状のワーキングペーパーでは貨幣供給を外生としていることに一つの課題がある。引き続き、銀行を通じた内生的貨幣供給の導入について検討を進める。
|