2020 Fiscal Year Research-status Report
The Empirical Analysis on Relations between Globalization and Executive Compensation
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20K13473
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
桑波田 浩之 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (40782785)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 企業ガバナンスの欠如 / 経営者報酬の高騰 / 所得格差の拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、経営者と社員の報酬の格差が拡大した要因を明らかにすることにある。その際、2008年の世界的金融危機の後、日本の上場企業において経営者と社員の格差が拡大したことを、輸出企業と非輸出企業の間に生じた準自然実験とみなし、企業ガバナンスの欠如やインセンティブ報酬制度が、経営者と社員の格差拡大にどのような影響を与えたかを日本企業のデータを用いて実証的に検証する。 研究初年度となる2020年度は、先行研究の調査、データの収集と整理を計画していたが、新型コロナウィルスの感染拡大による校務負担増、新型コロナウィルスに関する調査・研究の実施により進捗状況は遅れている。先行研究の調査については、Keller and Olney (2021/Journal of International Economics)がアメリカのS&Pの企業レベルのデータを用いて、操作変数法を用い、同様の目的で分析を行っている。分析の結果、企業の輸出は経営者の報酬へ正の効果を与えており、特に経営者が報酬委員会に入っているなど、企業ガバナンスが欠如している企業において効果が顕著に見られた。この研究の目的や結論は、本研究と類似しているが、本研究は2008年の金融危機を準自然実験とみなし、負のショックに対して経営者の報酬の反応が鈍いことに注目するなど、手法や帰結で Keller and Olney と差別化を図りたいと考えている。データの収集・整理については遅れており、当該研究期間に出来た作業は、新しいデータを結合する予定の既存のデータの整理・確認に留まっている。次年度、データの購入・整理を至急進め、分析に取り掛かりたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年度となる2020年度は、先行研究の調査、データの収集・整理を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大による校務負担増や新型コロナウィルスに関する研究の開始等により計画は遅れている。先行研究の調査に関しては、Keller and Olney (2021/Journal of International Economics)がアメリカのS&Pの企業レベルのデータを用い、操作変数法を用いて、本研究の目的と同様、輸出や海外直接投資が経営者の報酬へ与える影響について分析している。分析の結果、グローバリゼーションは経営者の報酬へプラスの効果を有すことを明らかにしている。更に企業ガバナンスが欠如している企業ほど効果が大きく、経営者を最高経営責任者(CEO)と一般役員に分けると、CEOの方が効果が大きくなっていた。これら結果は、近年の経営者の報酬の増加とレント収奪の関係を示唆する証拠となっている。その他、グローバリゼーションと経営者の報酬の関係を分析したChakraborty and Raveh (2018 / Journal of International Economics)、Cunat and Guadalupe (2005 / Journal of Labor Economics)等の先行研究の調査を進めた。Chakraborty and Raveh はインドの関税低下による輸入競争の激化がマネージャーの報酬へ与える影響を分析しており、Cunat and Guadalupe はイギリスのポンド高騰を利用し、競争の激化が経営者の報酬へ与える影響を分析している。一方、先行研究の調査に比べデータの収集・整理は遅れており、計画していたデータの購入には未だ至っていない。現在、データを結合する計画の既存のデータの整理・確認を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度は、先行研究の調査を終わらせ、データの収集・整理を開始している。本研究の目的はグローバリゼーションが経営者報酬の増加へ与えるメカニズムを明らかにすることにある。Keller and Olney (2021/Journal of International Economics)では、経営者が報酬委員会へ入っているなど、企業ガバナンスが欠如していることが、経営者への報酬増加へ影響を与えることを示唆している。本研究の事前分析では、2008年の金融危機の後、輸出企業において社員の報酬は低下する一方、経営者の報酬はほぼ変化はなく、社員と経営者の格差が広がったことを明らかにしている。輸出企業の中でも、特にどのような特徴を持つ企業で、経営者が報酬の低下を免れているかを見ることにより、経営者の報酬の決定要因を明らかにすることができる。Keller and Olney はアメリカの約20年間のデータで、操作変数を用いて仮説の検証を行っているが、本研究は金融危機の期間のデータを用いた準自然実験を利用しており、分析手法で先行研究との差別化を図りたいと考えている。データの収集・整理については未だ着手できていないが、新型コロナウィルスへの対応に追われ、遅れてしまった計画を次年度において取り返したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大による学会の中止・オンライン化、また研究の進捗の遅れにより、研究で使用予定のデータを購入できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度、早急にデータの整備を進め、分析に着手できるよう環境を整える。使用計画としては、学会中止にともなう費用減を追加データの購入に充て、より精度の高い研究結果を得られるよう分析を充実させたいと考えている。
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