2023 Fiscal Year Annual Research Report
The Empirical Analysis on Relations between Globalization and Executive Compensation
Project/Area Number |
20K13473
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
桑波田 浩之 長崎大学, 経済学部, 准教授 (40782785)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経営者報酬 / 不平等 / インセンティブ報酬 / コーポレート・ガバナンス / 労働組合 / 企業データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はグローバリゼーションが経営者と社員の所得格差に与える影響を明らかにすることを目的とする。その際、2008年にアメリカを起点として生じた国際金融危機を、国際化企業と非国際化企業に与えた非対称な外生的ショックと見なし、グローバル化と所得格差の関係について実証分析を行った。金融危機の後、日本の国内需要は4%程度しか低下していない一方、日本の輸出額は大幅に減少している。本研究では、企業の輸出と海外直接投資をそれぞれ処置変数として、金融危機の前後で差の差の分析を用い、負の需要のショックが経営者や社員の報酬に与える影響について検証した。 米国に海外子会社を保有しているかを処置変数とした分析においては、金融危機の後、経営者の報酬は有意に減少したことが判明した。製造業へのサンプルの限定やFDIの定義の変更、外れ値を考慮しても同様の結果が得られた。この結果は海外直接投資の増加が、近年の経営者報酬の増加の一因になっていることを示唆している。この研究成果は 2023年にApplied Economics Letters にて公表している。 また、企業の輸出比率を処置変数とした分析において、負の需要ショックが経営者と社員の報酬の差に与える影響について検証を行った。分析の結果、金融危機後、社員の給与は有意に低下した一方で、経営者報酬に有意な変化は見られず、企業内の所得格差が拡大していることが明らかになった。流動性制約、インセンティブ報酬、労働組合等をコントロールした上でも結果の頑健性は維持された。この分析結果はグローバル化が経営者と社員の報酬格差の拡大の一因になっているという解釈と整合的である。この研究はSSRNにて公開し、現在、Journal of international trade and economics development から条件付き採択の結果を受けている。
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