2020 Fiscal Year Research-status Report
Foreign Direct Investment and Productivity of Local Firms in Resource-Abundant Countries: A Case Study of Chile
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20K13482
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
村上 善道 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (50709772)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海外直接投資(FDI) / 後方連関 / 現地調達率 / GVC参加度 / GVC上流度 / 中間財関税率 / 事業所レベルデータ / チリ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき、2020年度においては、新興国・発展途上国における外資企業からの後方連関(国内企業からの中間財の調達)の決定要因に関わる先行研究をサーベイした。その上で、チリ国家統計局が行っている年次工業調査(ENIA)を用いて、事業所レベルデータの整理とパネルデータ化を行い、外国資本比率が100%の完全子会社と10%から99%のジョイントベンチャーからなるパネルデータセットをそれぞれ作成し、中間財の現地調達率をはじめとする分析に必要な変数の作成を行った。説明変数としてはTrade in value-added (TiVA)データベースからグローバル・バリューチェーン(GVC)への参加度および位置に関する指標を作成し、その産業分類に合わせて、最終財関税の実行関税率と産業連関表の投入産出係数を用いて中間財の実行関税率の計算を行った。これらを用いて、チリにおいて外資企業の生産する財のGVCへの参加指数や位置指数および中間財関税率が、外資企業の中間財の現地調達率に与えた影響を分析した。 さらに、Major Revisionの判定を受け査読者からのコメントに基づく改定において本件研究の分析結果の一部を用いた論文2件が、それぞれJournal of International Trade & Economic DevelopmentとOxford Development Studiesという定評のある査読付き国際ジャーナルに掲載が決定し、それぞれ出版済み、およびオンラインで公開済みとなった。 また現在、Covid-19の感染状況により、現地での調査は不可能であることも鑑み、チリを含むラテンアメリカの最新の経済状況とチリの資源関連産業の後方連関に関する具体的な状況に関する知見を深めるため、それぞれに関して専門家を招聘したセミナー2件をオンラインで開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき概ね順調に進展している理由としては、本研究課題の中心となる「問い」を検証するための文献サーベイおよびデータセットの構築を一通り終了することができた点があげられる。先行研究のサーベイからは、当該産業のGVCの中での上流度が相対的に高い(即ち自国の輸出のうち、輸出先から第三国に輸出される自国由来の付加価値の割合が高い)場合、外資企業の現地調達率が高くなることが明らかであり、本研究の分析の結果、一次産品関連産業のウエイトが高いチリの場合においても、当該外資系企業の輸出比率が高く、かつ生産する財のGVCの中での上流度が相対的に高い場合、有意に中間財の現地調達率が高くなり外資企業と国内企業の間の後方連関の形成が進むという大変興味深い結果が得られた。この結果をもとに現在、英語論文を作成中であり、作成次第、ディスカッションペーパーとして公表とするとともに、査読付き国際ジャーナルに投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Covid-19の感染状況により、現地での調査は引き続き困難であると考えられるが、本研究の中心となる問いを検証するためのデータなどは、既にオンライン上で入手済みであるため、引き続き研究計画に従って、研究を進めていきたい。今後は、できるだけ早く研究補助のための非常勤職員の人員を確保し、作業の効率化を進めたい。また、チリにおける外資企業からの後方連関の実態に関しては、専門家からのオンラインでの聞き取りなども可能な限り実施して進めていきたい。
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Causes of Carryover |
Covid-19の感染拡大のため大学院生の入構などが制限されたこともあり、2020年度においては、本研究の研究補助のためのアルバイト人員を確保することができなかった。また、本研究プロジェクトが開催したセミナーおよび研究代表者が出席した学会もすべてオンラインであったため、旅費を使用しなかった。2021年度においても引き続き、セミナー・学会はオンラインでの開催が予定されるが、研究補助に関しては可能な限り、非常勤職員を雇用する方向で計画通り人件費を使用したい。
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