2020 Fiscal Year Research-status Report
地域に基づく政策の評価における因果推論:EBPMに資する実証とモデリング
Project/Area Number |
20K13484
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福井 紳也 神戸大学, 経済学研究科, 経済学研究科研究員 (60851855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 工業(場)等制限法の影響 / 因果推論 / 地域に基づく政策 / 集計データと個票データ / 因果効果の識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、戦後日本における、公害などの外部不経済に対する代表的な政策の一つである「工業(場)等制限法」を取り上げ、その影響を因果推論で検証する。工業(場)等制限法は、大都市部の特定地域が指定されていたことから、地域単位の政策を意味する「地域に基づく政策」であり、この地域に基づく規制政策は、経済活動にどれほどの影響を与えたのかを実証的に検証する。政策の影響を正しく測るには、反実仮想的な状況との比較を正しく行うことが重要である。地域に基づく政策の評価においては、この反実仮想的な状況との比較に工夫がいる。工業(場)等制限法の影響をできるだけ正しく測り、強力な規制政策は時として適正な経済活動を阻害しうることや、地域の産業構造によっては負の影響が大きいことを示す。 本年度は、経済産業省「工業統計」の公表データのうち、市区町村別の工場数の集計データを用いて、マッチング法と差分の差分分析(DID)とを組み合わせた方法による因果推論を実行する研究を行なった。ところが、因果効果の識別に関して、いくつかの課題が見つかったため、集計データを用いた分析は一旦中断した。一方、経済産業省「工業統計」の個票データ(調査票情報)を用いた場合、集計データと比べると、因果効果の識別が比較的スムーズであると考えられるため、経済産業省「工業統計」の調査票情報の利用申請を行なった。今後、様々な角度からの分析が可能となるよう、「工業統計」の調査票情報は長期、かつ、全国レベルで申請した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
集計データを用いた研究における因果効果の識別に、いくつかの課題を感じ、集計データを用いた分析は一旦中断したため、当初予定よりもやや研究の進捗は遅れている。この遅れは、今後、個票データを用いた研究等を進めることで挽回できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、既に入手済みの経済産業省「工業統計」の個票データ(調査票情報)を用いた分析を実施する。第1段階として、個票データの個別データを再集計し、これを分析に用いる。再集計の基準は、工場の所在地や、工場の属性などであり、法制度上の境界線に基づく準実験的状況を用いる。因果推論のアプローチは、差分の差分分析(DID)や回帰不連続モデル(RDD)である。第2段階としては、個票データの工場ベースの長期パネルデータを作成して用いる。この長期パネルデータの作成にあたっては、RAを活用する予定である。因果効果の識別は、同じく、工場の所在地や、工場の属性などの違いに基づく。アプローチについても同様に、DIDやRDDを用いる。 さらに、工業(場)等制限法の制定当初の前後期間である、1950年代後半から1970年代にかけての状況についても分析を進める。進め方については、2021年度に入って下調べをしているところである。対象地域は大阪府内とし、年次は、工場等制限法制定時である1964年より前の1958年、1962年、法制定後ある程度期間をあけ、法律の影響が充分に出ていると考えられる、1970年、1974年とする予定である。まずは、用いる統計書に関して、国立国会図書館のデジタル化資料を複写する必要があり、国立国会図書館または、大阪府立中央図書館などの図書館向けデジタル化資料送信サービス参加館においての複写はRAを活用する予定である。さらに、複写物のデジタイズについては外部委託を行う。この研究については、他大学の研究者との共同研究として進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会参加ができなかったため、旅費や渡航費が生じなかった。今後は、RAや外部委託に多く使用する計画である。また、コロナ禍が収まり次第、国内外への学会に参加する予定である。
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