2021 Fiscal Year Research-status Report
地域に基づく政策の評価における因果推論:EBPMに資する実証とモデリング
Project/Area Number |
20K13484
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福井 紳也 神戸大学, 経済学研究科, 経済学研究科研究員 (60851855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域に基づく政策の評価 / 因果推論・計量経済学的分析 / 操作変数法 / 工業(場)等制限法 / 住工混在問題 / コロナ禍 / 緊急事態宣言 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地域単位の政策を意味する「地域に基づく政策」を因果推論によって評価し、証拠に基づく政策立案(EBPM)に資する実証研究とモデリングを行うことを目的とする。 戦後における代表的な規制政策の一つである「工業(場)等制限法」は、大都市部の特定地域に指定されていたことから、「地域に基づく政策」として研究開始時に最も注目していたところである。2021年度より、政府統計である「工業統計」のマイクロデータを整備中であり、「制限法」の解除時点を利用した実証論文を執筆中である。以上が1点目の研究である。 一方、大都市部周辺において、住宅と中小工場とが密集している「住工混在問題」は、「工業(場)等制限法」とも関係する一面がある。工場から空き地への土地利用変更という事象に着目し、その要因を「住工混在」と土地利用規制である「用途地域」とに見出し、回帰分析を実行するため、2021年度には、政府統計のマイクロデータの利用を申請し、現在承認待ちである。これは、同様の問題意識のもとに、2020年度に、地図や記述統計によって分析した本務先(大阪府)での調査研究に着想を得ている。また、マイクロデータを用いるまでの準備として、「住工混在問題」に関する論文を、本務先の紀要雑誌に投稿した。以上が2点目の研究である。 他方、研究開始時点以降に発動された、注目すべき「地域に基づく政策」として、コロナ感染の都道府県別の状況に応じて、政府により発令された「緊急事態宣言」を取り上げることができる。「緊急事態宣言」や「感染者数」といった情報に反応し、人々はどれほど外出を抑制したのかを評価すべく、計量経済学的に分析しており、2021年度より論文を執筆中である。以上が3点目の研究である。 なお、2021年度より、大阪府商工労働部商工労働総務課・客員研究員、Luong Anh Dung氏を研究協力者と位置付けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「工業(場)等制限法」の解除時点を利用し、因果推論を用いた実証研究に関しては、若干遅れている。一方、本務先の調査研究や、コロナ禍などから、本研究課題の遂行に重要な新たな研究対象を見出し、研究を進めていたことから、総じて順調に進展していると判断した。成果物の公表は遅れているが、データ整備と分析は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1点目の研究は、政府統計のマイクロデータの整備を終了させ、因果推論を実行することで、「工業(場)等制限法」の解除時点を利用した実証論文を完成させる。さらに、「制限法」にて制限された大学に関しても、その影響を見るための研究に着手しており、他大学の研究者と共同研究を進めているところである。これらによって、長期にわたった「工業(場)等制限法」による規制が経済に与えた影響を知ることができる。 2点目の研究は、承認待ちである政府統計のマイクロデータを整備し、工場から空き地への土地利用変更の要因として、「住工混在」と「用途地域」を用いた回帰分析を行う。土地利用変化と住工混在とは内生性を持つため、「住工混在」に影響したと考えられる「工業(場)等制限法」の指定範囲を利用し、因果推論の一種である操作変数法にて対処する予定である。結果として「工業(場)等制限法」が与えた間接的な影響を確認できるとともに、土地利用規制政策である「用途地域」が与えた影響についても確認できる。 3点目の研究は、既に推定は終わっており論文を完成させるのみである。本研究課題の開始時点では、EBPMに資する実証研究として「工業(場)等制限法」が与えた影響に着目していたところであるが、研究課題開始後に、コロナによる緊急事態宣言が発令されるなど、新たな「地域に基づく政策」が発動されたことから、この政策の評価も実施することで、別の角度から政策企画におけるEBPMに資することができ、本研究課題の成果を補完することができる。また、さらなる研究として、コロナ禍を契機とした経済社会の変化についての実証研究も実施可能である。 これらによって、2022年度は、複数の成果物を発表することが可能であると考えられる。 なお、大阪府商工労働部商工労働総務課・客員研究員、Luong Anh Dung氏は、2022年度以降も引き続き研究協力者と位置付ける。
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Causes of Carryover |
主には、引き続くコロナ禍により、国内外の学会等への旅費が発生しなかったため。 使用計画としては、文献購入、英文校正、論文投稿料などを予定している。
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