2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13485
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐藤 美里 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (70794585)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多国籍企業 / 参入阻止 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,昨年度より引き続き多国籍企業の参入と国内既存企業の垂直的取引構造についての研究に取り組んできた。その中でも特に垂直的取引制限に関わる研究に進展があった。 効率的な多国籍企業による参入の脅威に直面した場合,国内企業はその脅威に対して何らかの対応を迫られる。排他条件付取引契約は,取引相手に競合他社との取引をしないように求める契約である。このため,国内既存企業が投入財の供給企業(川上企業)や小売企業(川下企業)とこの契約を結ぶことに合意できれば,潜在的ライバルである多国籍企業の新規参入を阻止することも可能となる。ただ,より効率的な企業の新規参入が予測できている場合,国内既存企業がその取引相手と排他条件付取引契約を結ぶことは通常難しく,どのような市場環境でそのような契約が合意に至るのか,近年研究が進んでいる。 今回の研究では,効率性の高い多国籍企業だからこそ国内既存企業よりも取引相手の候補が多く存在する場合に着目している。多国籍企業の効率性が高い場合,国内の主要な取引相手との取引ができなくても効率性で劣る代替の取引相手が存在し得る。国内の主要な取引相手と取引条件の交渉を行う際に,その代替の取引相手を外部機会として利用し,多国籍企業は自社に有利な取り分を引き出すことができる一方,国内の主要な取引相手側は,多国籍企業との取引から十分な利益が確保できない状況が発生する。このことから,国内の主要な取引相手が,多国籍企業のライバルである国内既存企業の提案する排他条件付取引契約を受け入れる余地が生じる。補償金条項の含まれる排他条件付取引契約に合意することで,多国籍企業との取引よりも高い利益を確保できるのである。 本年度はこの研究論文の改訂を中心に取り組み,特に,関連論文との比較や本研究の貢献の明確化を進め,完成に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の下で進めている研究論文の1つが完成している。また,もう1つの研究についても論文にまとめており,来年度以降改訂作業に入る予定であることから,おおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
多国籍企業の参入が国内既存メーカーの投入財調達方法(アウトソーシングによる外部調達・垂直統合による内部調達)にどのような影響を及ぼすのか,国内企業の垂直構造に注目した研究を進めており,来年度はこの研究の改訂を進めて行く予定である。現在のモデル設定が複雑であるため,より簡素でわかりやすいモデル設定に改善可能かどうか検討し,完成に向けて改訂作業を中心に行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により,学会参加等のための旅費に差額が生じた。来年度,現在とりまとめている論文の改訂を進めるために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)