2020 Fiscal Year Research-status Report
Economic Analysis of Targeted Transfers and Universal Basic Incomes with Welfare Stigma and Incomplete Take-Up
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20K13486
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栗田 健一 九州大学, 工学研究院, 学術研究員 (10845978)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ベーシック・インカム / 生活保護 / 比較制度分析 / スティグマ / 漏給 / 不正受給 / パネルデータ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活保護制度とベーシック・インカム制度を比較制度分析するための第一段階として、生活保護受給にスティグマが存在し、不正受給と漏給が内生的に決定される経済理論モデルを構築・分析し、パネルデータを用いて実証分析を行なった。その分析により、既存の理論モデルでは説明不可能であった漏給と不正受給が同時に存在する状況を均衡解として導出している。これらの研究成果の一部は、査読付国際学術雑誌であるInternational Journal of Economic Theoryに掲載された(Kurita et al., 2020)。 理論分析では、先行研究の理論モデルにスティグマに対する心理的感度を導入し、さらにその感度が異質的であると拡張し、needyタイプとnon-needy タイプの両タイプの行動を内生化した。スティグマコスト関数は、生活保護受給者が不正受給者であることの条件付確率の関数として導入した。この設定の下で、真に貧困状態にある家計の一部が生活保護を受給せず、貧困状態でない家計の一部が不正受給を行なうという現実的な状況に一致する均衡を導出した。比較静学分析では、給付水準の上昇が真に貧困状態にある家計の受給インセンティブを低下させる可能性を示した。 実証分析では、給付水準と保護率の関係を、パネルデータを用いて検証した。OECDのマクロパネルデータ及びpooling、one-way fixed effect、one-way random effect、two-way fixed effect、two-way random effectの5つの計量モデルを用いて推定を用いたところいずれの推定値も保護率が給付水準に関して逆U字の関係にあることを示した。つまり、観察可能な社会経済条件だけでなく観察不可能な各国家の異質性をコントロールした上でも、理論分析の結果は頑健であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、スティグマと漏給と不正受給が相互依存する状況を分析するための理論モデルを構築・分析し、また理論分析の結果を実証分析により検証した。さらに研究成果を査読付学術国際雑誌に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2020年度に構築したKurita et al. (2020)のモデルを応用し、ベーシック・インカム制度と生活保護制度の比較制度分析を行なう。さらに本研究成果を研究論文として査読付国際学術雑誌に投稿予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響のため。この未使用分は、次年度の物品費などに含めて使用する。
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Research Products
(8 results)