2021 Fiscal Year Research-status Report
北朝鮮経済のミクロ実証分析と朝鮮半島の経済統合構想
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20K13490
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
柳 学洙 北九州市立大学, 外国語学部, 准教授 (80717926)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 北朝鮮経済 / ミクロ実証分析 / 産業分類 / 経済集積 / 市場化 / 経済大勢論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、申請者が作成した北朝鮮企業のデータセットに掲載されている製品データを、国際標準産業分類にしたがってコード化する作業をほぼ完成させ、このデータベースを使用した論文の執筆に入った。加えて、『朝鮮地理全書』に掲載された道路・鉄道網、発電施設などのインフラに関する記述を抽出・データ化する作業も順調に進んだ。このデータも論文の形で研究成果として発表する予定である。 『労働新聞』の記事や北朝鮮の学術誌に掲載された論文を渉猟し、金正日政権から金正恩政権にかけて、北朝鮮指導部の経済政策がどのような部分で変化し、どのような部分で継承されているかを分析する作業も引き続き行っている。 また、事前の研究計画にはなかったものの、北朝鮮と韓国の政治・経済体制を比較するという本研究課題のテーマのひとつに準じる形で、現在進行中の重要な世界的問題である新型コロナウイルスのパンデミックに対して、北朝鮮と韓国の政府がどのように対応し、またその結果、両国の社会と経済にどのような影響が及んだのかを、防疫および社会・経済的被害の最小化戦略の両面から検証し、その特徴を比較分析する研究を行った。さらに、北朝鮮と韓国の経済システムを比較分析するための基礎研究も引き続き進めている。今年度はとくに、韓国においてソウル-京畿道-仁川への首都圏一極集中がどのように進み、それが韓国における地域間の不均衡発展にどのような影響を与えているかについて、大きな関心を持って現状分析を行った。この作業が目に見える研究成果に結びつくまでにはまだ少し時間がかかると思われるが、各地域の均衡発展を目指した北朝鮮の開発戦略と対比できる特徴であり、両国の比較を行ううえで興味深いテーマだと見込んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う感染対策やオンライン授業対応などで事前の想定外の追加業務が生じ、研究に割く時間に影響が及んだ。また、海外渡航も引き続き制約が強い状況にあったため、資料収集や海外の研究者との交流が満足に行えず、研究の進展に少なからぬ影響を及ぼした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、計3本の論文を執筆・投稿することに優先して取り組む。1本目は、1980年代の北朝鮮の交通インフラと物流網について分析する論文であり、2本目は申請者が作成した国際標準産業分類に基づくデータセットを使用して、北朝鮮の各地域でどのような産業構造が形成されていったのかを分析する論文である。この1本目と2本目の研究成果に基づいて、1980年代の北朝鮮において、どのような製品が全国的に供給され、またどのような製品が自給自足的に消費されていたのかという、地域間の経済ネットワークを実証的に分析する3本目の論文を執筆する。この3本の執筆計画を遂行したのち、90年代の経済危機の時代に、北朝鮮が構築してきた経済ネットワークがどのように寸断され崩壊したのかなど、さらなる発展的な研究に進む予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度も、新型コロナウイルスの感染拡大抑制のために各国が施行した渡航制限によって、予定していた海外出張や研究交流を行うことがほぼ不可能な状況にあった。必然的にここに支出予定だった研究予算は執行できなくなり、資料購入などほかの用途に支出を回したが、計画に変更が生じた影響から、次年度使用が生じることとなった。2022年度からは、各国で渡航制限が大幅に緩和されることが予想されるため、海外出張や研究交流などに支出する予算も増加する予定であるが、状況は依然として流動的なため、どのような事態が生じても柔軟に対応できるような執行計画をたてて進めていく。
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