2022 Fiscal Year Research-status Report
北朝鮮経済のミクロ実証分析と朝鮮半島の経済統合構想
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20K13490
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
柳 学洙 北九州市立大学, 外国語学部, 准教授 (80717926)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 工業配置 / 物流・輸送 / 経済政策 / 人口・居住 / 北朝鮮経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、申請者が作成した国際標準産業分類にしたがってコード化した北朝鮮企業のデータベースを使用した論文の執筆を進め、またこのテーマと関連した学会報告を韓国で行い、現地の研究者と意見交換を行った(「北朝鮮の工業企業配置と自力更生戦略」, 2023経済学共同学術大会・韓国東北アジア経済学会発表[韓国語], 2023年2月2日)。 また、『朝鮮地理全書』に掲載された道路・鉄道網などの物流および輸送インフラに関する記述を抽出・データ化してから分析する作業も進め、進捗状況を研究会で発表した(「朝鮮民主主義人民共和国の物流システムの分析-1980年代の統計資料を用いた予備的検討-」, 比較経済研究会・福岡ワークショップ, 2022年9月15日)。 さらに、金正日政権から金正恩政権にかけて、北朝鮮指導部の経済政策がどのような部分で変化し、どのような部分で継承されているのか、またその移り変わりの中で、自力更生路線がどのような役割を果たしているのかを分析した論文を執筆した(「自力更生路線と内向きの経済改革の推進-外部の影響排除を目指す金正恩政権」, 日本経済研究センター2022年度「アジア研究」報告書, 第5章部分[未刊行,5月末に文眞堂より書籍として刊行予定])。 ほか、北朝鮮の各行政区域における住民の人口数と、住宅や教育・医療施設、企業などの配置を見ることで、市・郡レベルで住民の経済・社会活動がどのように営まれているかを分析するための研究も進めた。この研究作業は、『朝鮮地理全書』の記述と、国連の協力を得て1993年に実施された人口センサスのデータを用いて行っており、人口と居住地域というミクロの視点から北朝鮮経済の実相を明らかにするという点で意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度も、海外渡航に強い制限があったが、年度の後半には状況が改善し、韓国の学会に参加して研究者との交流も行えた。ほか国内での研究会も頻繁に開催されるようになり、研究を推進するための環境が平常時に戻りつつあることもあって、昨年度よりも研究は進んだ。とはいえ、2020年度および2021年度の新型コロナウイルスのパンデミックによる影響は大きく、やむなく研究計画を当初の予定より1年延長することとなった。これまで進めてきた研究作業は形になってきているので、これを論文や書籍の形でまとめることにいっそう注力する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、北朝鮮の鉄道運輸に関する論文と、自動車運輸に関する論文を執筆し、同国の物流・輸送システムがどのように形成され、機能してきたのかを明らかにする。 また、北朝鮮の各行政区域における人口配置と生活基盤に関するミクロレベルの実態分析も行い、これも論文にまとめる。これと合わせて、本研究課題の期間を通じて執筆を続けている、北朝鮮の産業構造に関する論文も完成させる。これによって、北朝鮮の自力更生路線の実態、すなわちどのような製品が生産され、全国的に供給・輸送されていたのか、また各地域で自給自足的に消費されていた製品は、住民の需要をどのように満たしていたのかを明らかにすることができると考える。そして90年代の経済危機を経て、現在の金正恩政権が、どのようなヴィジョンのもとで経済を再建しようとしているのかを、上記の研究成果に基づいて分析する計画である。
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Causes of Carryover |
2022年度も、年度半ばまで海外渡航が難しい状況にあったことや、計画に変更が生じた影響から、次年度使用が生じることとなった。2023年度からは、海外出張や研究交流などに支出する予算も増加する予定であり、資料購入などにも予算を回す。そのほか、どのような事態が生じても柔軟に対応できるような執行計画をたてて進めていく。
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Research Products
(2 results)