2020 Fiscal Year Research-status Report
Tax Expenditures and Taxpayer Consent in the United States from Historical Perspective
Project/Area Number |
20K13510
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
茂住 政一郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50757094)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 租税支出 / 納税者の反乱 / 納税者の同意 / アメリカ財政 / 財政社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、本課題が重視する視点の一つである、アメリカ連邦政府による 「租税支出」の概念の構築と連邦税制、納税者の評価の関係について、1960年代半ば、租税優遇措置の 富裕層への不公平な偏りの是正を目的として、財務省内部で租税優遇措置を「租税支出」と 読み替える概念が構築された歴史的文脈の下で1969年に行われた連邦税改正の政策決定過程とその現代的意義についての研究を行なった。 この研究の結果、①1969年連邦税制改正は租税支出の概念に従って、連邦税制の不公平性をもたらしていた租税優遇措置を一定程度縮小・廃止し、垂直的・水平的公平性を高めたこと、②低中所得層向けの租税負担軽減措置の組み合わせにより、連邦税制の不公平性と負担感の重さに反発を高めつつあった彼らの租税同意を取り付けることが試みられていたこと、③しかし、インフレーション抑制を目的として、この税制改正との組み合わせで行われた時限的な所得税の付加税率の適用が、②の効果を打ち消し、むしろ苦しむ中間層向けの増税としての側面を持って69年税制改正が成立したこと、④そのことが1960年代半ばに高まりつつあった租税抵抗を抑えることに失敗し、むしろその動きを加速させた可能性があることを明らかにした。 以上の研究結果は、①第二次世界大戦後から1970年代前半にかけての連邦税制に対する納税者の不満と要望、②連邦税制改正案による①についての勘案の有無、 ③1970年代前半までの税制改正の結果がもたらした「納税者の反乱」発生につながった歴史 的・制度的要因を未公刊資料を活用した歴史実証分析によって明らかにするという本研究課題の一部となるとともに、主に③を行う重要性をより一層高めるものであると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、第二次世界大戦後から1970年代前半を分析対象の時期に定めており、その中でも特に重要なのは、1970年代前半の先行研究の蓄積が薄いアメリカ連邦税制史分析である。これまでの研究成果と今年度の研究成果に基づき、今後、1970年代前半の研究を行い、一度1940~50年代に時期を戻し、これまでの研究成果の穴を埋める視覚を得ることができた。また、本研究の課題の一つである、財政分析に「納税者の同意」を取り込んだ分析視角の提示についても、1960年代後半の租税抵抗の歴史実証分析を行うことで、示唆を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度の研究成果に基づき、①1970年代前半の研究を行い、②一度1940~50年代に時期を戻し、これまでの研究成果の穴を埋め、③財政分析に「納税者の同意」を取り込んだ分析視角の提示について取り組む予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、アメリカに渡航し、資料収集することができなかった。そのため、海外渡航費や資料収集に必要な機器(デジタルカメラ等)を購入するための経費を一部使用することができなかったことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。 今後の使用計画としては、引き続き、海外渡航費としての使用を前提とする一方、今年度の研究成果を英語で査読付き学術雑誌に投稿する際の英文校閲費、その他図書などの物品費としての利用する計画である。
|
Research Products
(1 results)