2023 Fiscal Year Research-status Report
Policy evaluation on long-term care and employment in an aging society
Project/Area Number |
20K13511
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
明坂 弥香 神戸大学, 経済経営研究所, 助教 (40844593)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 高齢者 / 就業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは、高齢者を対象とした政策効果の分析を行っている。2023年度は,高齢夫婦の労働供給の補完性に関する分析を引き続き行った。
当該研究では、2006年に施行された高年齢者雇用安定法の改正を受けて、夫婦いずれかまたは両方の退職年齢が引き上げられた時、その夫婦の退職行動がどのように変化するのかを分析している。高齢夫婦の退職行動に着目した既存研究のほとんどは、年金受給開始年齢の引き上げを自然実験として利用し、夫婦の労働供給の波及効果について調べている。年金受給開始時期の延期は、家計に負のショックをもたらすため、政策変更の対象でない配偶者も家計を通して政策変更の影響を受けることになる。この時、政策変更の対象者のみならず、その配偶者が労働供給を増加させるという結果は、負の所得ショックに反応しているのか、夫婦で同じように時間を過ごすことに対する選好(couples' interdependent time-use preferences)が影響しているのかは区別できない。本研究が注目する退職年齢の引き上げは、負の所得ショックを伴わないことから、補完的な時間利用に対する夫婦の選好にフォーカスすることができる。
Callaway and Sant’Anna (2021)が提案するDifference in Difference法による分析を行い、政策変更のアナウンス、実際の制度執行、およびその後の期間について、それぞれ影響の違いを観察した。分析の結果、政策変更の対象者を見ると男性は退職時期を延長させるが、女性はその配偶者も同時に政策変更の対象であった場合のみ、退職時期の延長が観察された。また、配偶者が政策変更の対象で本人は対象外の場合、統計的に有意な退職延長は観察されなかった。つまり夫婦内での波及効果は見られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データの利用方法をオンサイト施設での利用から、CD-ROMによる個票データの提供に切り替え、申請手続きに時間がかかった分、政府統計を利用手続きのために余計に時間を要した。また、科研延期に伴うデータ利用期間の延長を毎年申請しなおす必要があり、それも進捗の妨げとなっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
高齢夫婦の労働供給の補完性に関する研究を引き続き行い、完成を目指す。 既に必要な分析は一通り完了しているため、2024年度中にDiscussion Paperとして公開し、学会報告を行う後、専門誌への投稿を行う。
|
Causes of Carryover |
データ利用方法の変更により、プロジェクトの進捗に遅れが生じたため、英語論文の英文校正費と学会報告にかかる旅費を次年度に繰り越すこととした。
|