2020 Fiscal Year Research-status Report
Empirical analysis of household consumption using subjective data
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20K13512
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
新関 剛史 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (40733986)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 期待インフレ率 / 非伝統的財政・金融政策 / 家計支出 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、2つの研究テーマのうち、①(ゼロ金利制約下において)期待インフレ率が家計消費に与える影響についての研究を進めた。分析は当初の計画通り、総務省「家計調査」と内閣府「消費動向調査」をマッチングする形で行なったが、2点変更があった。第1に、個人レベルのマッチングを諦め、出生年コホートレベルでのマッチングに切り替えた。これは、個人レベルではノイズが大きすぎ、安定的な結果が得られないと判断したためである。第2に、「家計調査」の耐久財支出がかなり過少報告されていることがわかったため、耐久財支出については、Unayama (2018)に従い、プリコード方式でより精緻な値が得られると期待できる、総務省「家計消費状況調査」を用いて補正を行なった。 その上で得られた結果は以下の通りである。第1に、期待インフレ率が1%ポイント上昇すると、四半期総支出は11,930-14,779円、あるいは1.0-1.4%上昇する。第2に、支出項目の中で最も反応が大きいのは耐久財支出であり、期待インフレ率が1%ポイント上昇すると、四半期耐久財支出は9,826-10,141円、あるいは8.8-9.1%上昇する。第3に、非貯蔵非耐久財支出(生鮮食品など)に有意な反応はなかった。これらは、異時点間の代替効果が重要なチャネルとして機能していることを強く示唆している。 最後に動学的な分析を行なったところ、一時的に期待インフレ率が1%ポイント上昇するショックに対して、当該四半期の総支出は2%上昇するが、2四半期後にはそのほぼすべてが反動減によって相殺され、長期的な反応はほぼゼロであった。よって、期待インフレ率を引き上げることによる消費への刺激効果は、非常に短期でのみ有効である可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定している2つの研究テーマのうち、①(ゼロ金利制約下において)期待インフレ率が家計消費に与える影響については、青山学院大学経済学部ワークショップ及び内閣府ESRIセミナー(討論者:阿部修人一橋大学教授)で研究報告を行なっている。また、これらのセミナーで得られたコメントを反映させる形ですでに初稿を完成している。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの研究テーマのうち、①(ゼロ金利制約下において)期待インフレ率が家計消費に与える影響については、2021年5月中を目途に内閣府経済社会総合研究所からディスカッションペーパーとして発刊予定である。また、5月に開催される日本経済学会春季大会(関西学院大学、討論者:一上響氏@日本銀行)、6月に開催されるEconometric Society Asian Meeting(マレーシア)で研究報告を行なった後、査読付き英文ジャーナルへ投稿予定である。 よって、今後は主に2つ目の研究テーマである②(恒常及び一時)所得ショックが家計消費に与える影響の分析に注力していきたい。まずは、Pistaferri(2001)で開発された手法を日本のマイクロデータに応用し、所得ショックを恒常所得ショックと一時所得ショックに識別することを試みる。その上で、それらが家計支出に与える影響を分析していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、旅費を活用することができなかった等の理由による。次年度は分析ソフトウェア購入などにより、物品費を中心に支出する予定である。
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