2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13513
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菅 史彦 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (20799556)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Income Inequality / Weighting Adjustment |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、過去30年間に日本で起こった様々な経済現象が、所得格差に与えた影響を分析することを目的としている。経済現象が所得格差に与える影響を、データから直接識別することは難しいが、本研究では構造推定の手法を用いることでこれを克服することを目指している。 構造推定を行うために、まずは過去30年間における所得格差の推移を分析する必要がある。そのため、まずは日本における所得格差の分析において最も頻繁に用いられる、全国消費実態調査と国民生活基礎調査のデータを分析する。まずは内閣府経済社会総合研究所の研究プロジェクトの一環として、これまでに全国消費実態調査のデータを用いて所得格差を分析した。その分析結果はHori et al. (2020)としてまとめ、内閣府経済社会総合研究所のDiscussion Paper Seriesとして公表されている。 本年度は主に国民生活基礎調査のデータを用いて所得格差の分析を行った。国民生活基礎調査のデータを用いて計算された格差指標の値は、全国消費実態調査のデータを使って計算された格差指標の値よりも高く出ることが知られている。これは、抽出された標本の偏りのためであると考えられており、本研究プロジェクトでは、国勢調査の個票データを使い、この偏りを補正することを試みている。 既に国民生活基礎調査のデータを使った分析の結果は出ており、論文にまとめる作業に取り組んでいる。全国消費実態調査を用いた分析で得られた結果と整合的な部分、不整合な部分があり、その原因に関する考察を加え、ESRIセミナーで研究報告を行って有識者から貴重なコメントを得た。そのコメントを論文に反映させ、近日中にESRI Discussion Paper Seriesとして公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
内閣府経済社会総合研究所の研究プロジェクトでは、国勢調査の個票データを用いてウェイトを作成し、全国消費実態調査と国民生活基礎調査の両方に、同じ基準で作成したウェイトを用いた補正を施すことで、日本における所得格差に関する統一的な知見を得ることを目指している。そのため、分析には国民生活基礎調査のデータに加え、国勢調査の個票データを用いる必要があるが、これらは内閣府経済社会総合研究所に設置されたオフライン端末でしか利用できない。そのため、頻繁に東京に出張する必要があるが、Covid-19の感染拡大により、私が所属する九州大学および出張先の内閣府経済社会総合研究所でも行動制限が課せられており、当初の予定通りに出張することができなかった。そのため、作業に遅れが生じたが、国民生活基礎調査のデータを用いた論文は公表までこぎつけることができる見通しであり、やや遅れはあるものの、成果は出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトは、日本における経済事象が家計の格差に与える影響を、構造推定により明らかにすることを目指すものである。そのため、最終的には、経済理論に基づいて構築された構造モデル(ライフサイクルモデル)を推定し、経済現象に関する仮想シミュレーションを行う予定である。 そのための準備として、過去30年間に起きた経済事象に、ジニ係数や相対的貧困率といった格差指標がどのように反応しているのかを知る必要がある。そのために、全国消費実態調査と国民生活基礎調査のデータを用いて、格差指標の推移と、その要因について分析してきた。 まず喫緊の課題として、国民生活基礎調査のデータを用いて分析した結果を、ESRI Discussion Paper Seriesとして公表する必要がある。これは既にほぼ作業を終えており、近日中に完了する見通しとなっている。 今後の方向性としては、まずは全国消費実態調査と国民生活基礎調査のデータから共通にみられるパターンを分析する作業を行う。現時点までの分析で明らかになったことは、国勢調査の個票データから作成したウェイトによる調整を施しても、2000年代における所得格差の推移は、全国消費実態調査と国民生活基礎調査の間でかなり異なっているということである。 構造モデルを推定する過程では、現実の所得格差をシミュレーションで再現できるようなパラメータを見つける必要がある。その際にターゲットとなる「現実の所得格差」を、どちらの調査から得られたものにするかを慎重に見極めた上で、構造モデルの構築と推定作業を進める予定である。 モデルの推定結果が出次第、国内外の学会で研究発表を行い、有識者から得たコメントを論文に反映させた上で、査読付き国際学術誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究における分析では、内閣府経済社会総合研究所に設置されたオフライン端末でのみ利用が許可されているデータを使う必要があるが、Covid-19の感染拡大により、東京へ出張する機会が減り、作業に遅れが生じた。そのため、次年度に作業を一部持ち越す必要があった。 次年度は、研究成果を論文にまとめ、査読付き国際学術誌に投稿する予定となっている。そのためには、国内外の学会や研究会等に参加し、有識者からコメントもらう必要があり、予算のほとんどは旅費に使用する予定である。
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