2020 Fiscal Year Research-status Report
消費者の誘惑と自制心を考慮した年金制度に関する研究
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20K13521
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
熊代 和樹 岡山商科大学, 経済学部, 講師 (30823124)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 積立型年金 / 誘惑と自制心 / 世代重複モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
公的年金を導入する理由の一つに、それにより少なくとも掛け金に応じた所得が老年期に保証されるという点が挙げられる。この観点においては、“標準的な”消費者を考える場合には、このような年金制度は私的な貯蓄によって代替可能であるために、年金制度を導入することで社会厚生が改善されることはない。しかし、若年期に過剰消費してしまう誘惑に駆られる消費者を想定する場合には、過剰消費を自制するための心理的コストを軽減するためのコミットメントデバイスとして年金制度が機能し、社会厚生を改善する可能性が出てくる。この点に着目した Gul and Pesendorfer (2004) をはじめとする一連の研究は、実際に年金制度の導入が自制の心理的コストまで考慮した社会厚生を改善することを示した。 本研究は消費者の感じる誘惑とそれに対する自制心を明示的に扱い、自制することの心理的コストまで含めた社会厚生を最大にする年金制度を構築することを目的とする。特に、「自制心の強さが人によって異なること」、「年金を担保とした借り入れを許容すること」が先行研究と比較した本研究の大きな違いである。この枠組みの下で本研究では世代重複モデルを用いて、得られた年金制度が長期的に社会厚生や貯蓄行動等にどのように影響するかを明らかにする。 現在は申請書に記載した予定に従い、既存の結果を世代重複経済に当てはめる理論分析を進めている。現段階では各個人が2期間生き、各時点で若年期の世代と老年期の世代、計2世代のみが存在する、比較的シンプルな設定で問題を考えている。今後の進捗と結果次第でより一般的な状況へ拡張することも検討する。 加えて、初年度までに得られていた研究成果をまとめ、論文を国際学術雑誌に投稿した。現在審査の結果を待っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス拡大の影響を受け、オンライン授業やハイブリッド授業への対応のため所属大学での授業負担が増えている。そのためまとまった時間が取りづらく、進捗に遅れが出ている。今年度も同様の状況が続いているが、遅れを取り戻せるよう努める。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の前半は引き続き理論分析を進める。まずは誘惑と自制心を考慮した下での最適年金制度を導出する。その後比較静学を行い、人口や誘惑強度の分布が制度や実現する後世に与える影響を探る。今年度の後半からはシミュレーションを併用しながら、人口や金利の変動、世代間のパラメータの違いがどのように結果に影響するかを調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入についての当初の予定と比べて金額がやや低くなったため次年度使用額が生じた。次年度の交付額と併せてに論文投稿の際の英文校正費や投稿料、旅費などの経費として利用する予定である。
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