2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13522
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
森田 薫夫 福岡大学, 経済学部, 講師 (00802737)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 最適課税 / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、納税者による経済活動の補足の難しさに起因した税務執行上の課題を考慮した最適課税問題に取り組む。本年は研究課題に関連する経済実験に関する論文を書き上げ、ディスカッションペーパーとして発表した(A discount factor and the ratchet effect: An experiment, (2020), ソシオネットワーク戦略ディスカッションペーパーシリーズ第90号)。本実験では、エージェント(納税者に対応)の労働生産性に格差があり、かつプリンシパル(課税当局に対応)との間に生産性に関する情報の非対称性がある2期間経済を想定する。プリンシパルは初期に顕示された納税者の経済活動の結果から、生産性を類推し、2期目に契約(課税政策に対応)を提示し直す。この契約変更を織り込んだ労働生産性の高いエージェントは、自らの生産性を秘匿する誘因を持つ(ラチェット効果と呼ばれる)。本実験ではラボ実験の手法を用いてラチェット効果の存在を検証し、エージェントの割引率がその意思決定に影響を与えるかについて分析している。なお、本研究は立命館大学総合心理学部、森知晴准教授との共同研究である。本研究課題では主たる分析手法は理論分析を想定しているが、本研究は実証分析、特に経済実験の手法を用いたものである。理論分析とは異なる分析手法から研究課題を考察することで、本研究課題で示される研究成果がさらに広がりを見せることが期待される。現在、査読つき国際学術雑誌に投稿し、査読結果を待っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、参加予定であった国際学会の中止や本研究課題のエフォートの修正を余儀なくされたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、納税者による経済活動の補足の難しさに起因した税務執行上の課題を考慮した最適課税問題を研究の主題とする。ピア・トゥ・ピアと呼ばれる経済活動だけでなく、感染症流行期における個々の経済主体による罹患予防行動といった、様々な納税者の意思決定を考察対象とした理論分析に取り組む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、出席予定であった国内学の学会が中止となり、旅費を拠出することができなかったため。また、本研究課題のエフォートの修正を余儀なくされ、物品費とその他費用の拠出が減少したため。 次年度は本研究課題のエフォートを予定通り確保し、物品費とその他費用を使用していく。
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