2020 Fiscal Year Research-status Report
International monetary policy coordination with deep habits
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20K13531
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Research Institution | Osaka Gakuin University |
Principal Investigator |
岡野 光洋 大阪学院大学, 経済学部, 准教授 (20635065)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 消費の深層習慣 / 2国モデル / 一物一価の法則 / 習慣に対する価格設定 / 最適金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の1年目となる2020年度は、交付申請書に記載された研究実施計画に基づき、先行研究の整理、数値解析ソフトウェアの適用性の検討、先行研究の再現実験を行った。 先行研究の整理により、消費の深層習慣(deep habit)を二国モデルに組み込む際の課題が明らかになった。とくに、深層習慣を組み込んだ二国モデルでは一物一価の法則が成り立たないことから、これを適切にモデル上で表現する必要がある。またモデルが複雑になるにつれて、深層習慣の程度を表すパラメータに何らかの単純化の仮定(対称均衡の仮定など)を課さなければ定常状態を解析的に解けなくなる。このことから、多様なシミュレーションの実施(パラメータの柔軟な変更)とモデルの単純化のトレードオフを考慮してモデルを構築することが今後の課題である。 上記の活動に合わせて、数値解析ソフトMATLAB上で動作するツールボックスを新規に開発した。これは、MATLAB上で動作するフリーソフトウェアDYNAREに,オブジェクト指向プログラミングの手法を取り入れて拡張したものである。従来のツールでは、モデルのパラメータを動かしながらインパルス応答関数や内生変数の分散を計算するためには、複雑なループ処理を実装する必要があり、煩雑であった。本ツールボックスを活用し、コーディングの手間を大幅に節約することで、直感的かつ探索的なシミュレーションを可能にし、次年度以降の研究を効率的にすすめていく。 本ツールボックスを用いてLeith et al. (2009) の分析を再現し、誤りのない結果が得られることを確認した。これらのソースコードは、研究成果としての論文と同時期に公開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、交付申請書に記載の研究実施計画の1年目に沿って研究が実施され、研究計画に記載の事項は概ね達成された。また2年目に研究実施予定のモデルビルディングについても、その基本的部分についてはすでに着手しており、単純なシミュレーション等は問題なく実行できることを確認している。現在はこれまでの整理・分析をまとめた論文を執筆中である。しかしながら、年度内に対外発表や研究成果物を公表するには至らなかったことから、本研究課題の進捗状況について、やや遅れていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、交付申請書に記載の研究計画の2年目に沿って推進していく。具体的には、Benigno and Benigno (2006)やCorsetti et al. (2010)、Bodenstein et al. (2019)の2国モデルをベースに、Ravn et al. (2007)、Leith et al. (2009)の手法で消費の深層習慣をモデルに組み込む。これを用いて最適金融政策について分析する。非線形のモデルを数値計算によって解くとともに、対数線形近似されたモデルを用いて二次形式の厚生分析を並行して行うことも検討する。今後はこれまでに整理・分析した結果を積極的に公表するなど、アウトプットに注力する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルス感染症の世界的流行により、学会報告等で計上していた旅費が支出できなくなり、次年度使用額が生じた。2021年度も同様の事態に直面することが予想されるが、書籍・論文の購入や英文校閲、国際雑誌の投稿料等、研究成果の公表等、研究の遂行および公表に必要な経費を順次支出する予定である。
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