2021 Fiscal Year Research-status Report
貸出拡大に起因する住宅価格のブームとバストのサイクルに関する研究
Project/Area Number |
20K13532
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
戸部 智 関西学院大学, 総合政策学部, 講師 (00824145)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 信用供給量 / 住宅市場 / 住宅価格サイクル / 資産バブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は住宅価格に対する家計向け貸出の短期から中期的な影響を検証する.従来の研究では,(1)貸出拡大が住宅価格ブームを引き起こすというポジティブな効果と,(2)貸出拡大が後々の住宅価格ブームの崩壊を伴う金融危機や不況に帰着するというネガティブな効果が別々の系統の研究で検証されてきた.それに対して,本研究はローカル・プロジェクション手法を用いて家計向け貸出の拡大が短期的には住宅価格の上昇を引き起こすが,将来的には住宅価格の下落を予測することを統一的に示す. 本年度は,①分析手法のアップデート,②中期的な住宅価格下落の原因の探究,③ワーキングペーパーの作成を行った. ①について:分析手法をOLSによる推定(LP-OLS)から操作変数を用いた推定(LP-IV)に変更した.各国の貸出は世界的な貯蓄過剰や金利低下といった共通ショックに影響される.しかし,共通ショックに対する感応度は各国で異なることが予想される.これを踏まえて,共通ショックと各国個別の感応度の交差項を各国貸出の操作変数として利用した.これはバルチック型の操作変数の考え方に沿った識別戦略である.結果として,LP-IVによる分析でも貸出拡大に起因する住宅価格のブームとバストのパターンは確認された.興味深い点は貸出拡大に対して長期金利が低下するパターンも認められたことである.したがって,分析は供給ショックを識別していると推測される. ②について:金利の推移に注目した分析を進めた.住宅価格が大きく下落したイベントに注目すると,下落の1年ほど前から短期金利が上昇するパターンが認められた.これはブームに対応した金融引締政策を捉えていると推測される.金融政策の反応が住宅価格の下落を誘発した可能性が考えられる. ③について:上記の分析結果を反映したワーキングペーパーを作成した.同ペーパーは海外学会での発表申請に利用した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の報告書では,(1)貸出が増加する原因を調査し,操作変数への利用を探ること,(2)中期的な住宅価格下落の原因を探ること,(3)ワーキングペーパーを作成することを推進方策としていた.研究実績の概要に記載した通り,この3点は概ね達成されている.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の3点の達成を目指す.(1)引き続き中期的な住宅価格下落の原因を調査する.本年度は短期金利に注目した分析を進めたが,今後はより市場のリスクを反映した指標,例えば金利スプレッド,に注目した分析を続ける.(2)副次的論文の取りまとめを行う.研究を進める中で差分の差分法を利用した分析の可能性を発見した.予備的分析は終了しており,既にセミナーでの発表も行っている.今後はこの副次的な研究もワーキングペーパーに取りまとめる. (3)セミナー発表等でのフィードバックを受けてワーキングペーパーをアップデートする.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由: 新型コロナウイルスの感染状況を考慮して学会やセミナーなどへの参加を見送ったため. 使用計画: 学会やセミナーへの参加,英文構成サービスの利用,デスクトップPCの購入
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Research Products
(1 results)