2023 Fiscal Year Research-status Report
日本における量的・質的金融緩和政策の実体経済に対する効果の検証
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20K13533
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
井尻 裕之 岡山商科大学, 経済学部, 准教授 (20784911)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量的・質的金融緩和政策 / TVP-VAR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本における量的・質的金融緩和政策(QQE)が実体経済に及ぼす影響を多角的に分析している。2023年度については、日本のQQEの実体経済に対する影響についての結果をまとめ、関西応用経済学研究会にて報告を行った。2022年度の結果よりモデル等に対して一部修正や変更を加えている。 QQEによる日本経済への影響について、本研究の大きな特徴は実体経済に対する影響を内需と外需に分けて、その影響を検証していることにある。日本経済は長年にわたって輸出主導型の経済構造がとられてきた。そのため、QQEの影響は内需と外需で大きく異なることが考えられ、それは業種によって大きく異なることも考えられる。そのため、本研究ではQQEによる業種別の実体経済への影響を内需と外需に分けて、TVP-VARモデルを用いて検証している。その結果、主に3つの結果が得られた。まず第1にQQEは多くの業種で外需に対して影響を及ぼし、内需に対しての影響は限定的であった。さらに日本経済への影響が大きい一般機械業・電気機械業・輸送用機械業については、一般機械業を除き、総じて影響は限定的であったことが挙げられる。第2にQQEの波及経路として為替経路は2014年末まで業種によって有効な波及経路であったが、その後は限定的であったことが挙げられる。一方で、QQEの波及経路として株価経路はQQEが始まった当初から有効な影響を及ぼしていたが、次第にその有効性は失われ、限定的であったことが挙げられる。 以上の結果より、本研究ではQQEの影響を初めて内需と外需に分けて明らかにし、さらに有効な波及経路の可能性も示唆した。その中で、株価経路については一般的に想定される株価経路ではなく、QQEによる株価上昇に伴い、企業の設備投資増加が起こり、業種によっては輸出を増加させる経路の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究結果がそろい、2024年度には国際学会をはじめとした報告を予定しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中である日本のQQEの実体経済に対する影響に関する研究について、2024年度中に学会等にその成果を発表していきたい。さらに論文等にも引き続きまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
国際学会等への発表が遅れたことによるものであるが、2024年度に向けて国際学会等への報告に向けた旅費や校正費等に充てたい。
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