2020 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の企業経営における学卒企業家集団の役割に関する一考察
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20K13544
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
三科 仁伸 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (10825152)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 企業家ネットワーク / 戦前期日本 / 就業構造 / 就職市場 / 高等教育機関 / 慶應義塾大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に対して,新型コロナウィルスの蔓延により十分な資料調査ができない中であったが,これまで収集した資料を中心に分析をすすめることができた。具体的には,国立国会図書館等の公共図書館で資料調査及び慶應義塾大学福沢研究センターでの資料調査を実施した。特に,後者の調査では,新規に発見された戦前期の同校で学生の就職活動にあたった職員の手帳を写真撮影するとともに,その分析をおこなった。 以上の成果として,2020年度は,「学閥企業家集団に関する経済史研究の意義と課題―伊東要蔵とその周辺―」(『史学』第88巻第3・4号,三田史学会,21頁-46頁,2020年6月)及び「戦前期日本における高等教育機関による実業界への人材供給―慶應義塾大学出身者を事例として―」(『近代日本研究』第37巻,慶應義塾福沢研究センター,159-186頁,2021年2月)の二本の論文を刊行した。 前者は,これまでの研究成果を概観するとともに,本研究課題に関する研究史上の意義及び課題を,伊東要蔵及び慶應義塾大学の事例に即してまとめたものである。 後者は,それをうけて,戦前期の日本を代表する高等教育機関であり,実業界に人材を供給した主要なそれの一つである,慶應義塾大学出身者の就業構造を,長期的な時間軸の中で明らかにした。その結果,同校の出身者は,一般企業を中心とした実業界に進出するものが多くいた。その際,具体的な企業への就職においては,学内における選抜が重視されていたことから,当該時期における段階的選抜制度とそれを支えた高等教育機関の役割を析出した。 また,11月14日に福岡大学で開催された九州歴史科学研究会で,「戦前期日本におけるミドルマネジメント論再考」と題した報告をおこない,実際の企業内部における企業家ネットワークの役割について,電力や軽工業分野の企業を対象とした分析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,新型コロナウィルスの蔓延とそれに対する社会一般の活動の抑制(資料館等の閉館や学内の出張自粛要請など)により,計画した調査等が実施できなかった。ただし,これまでに収集した資料の分析を進めるとともに,可能な限りでの調査や文献の収集により,「学閥企業家集団に関する経済史研究の意義と課題―伊東要蔵とその周辺―」(『史学』第88巻第3・4号)及び「戦前期日本における高等教育機関による実業界への人材供給―慶應義塾大学出身者を事例として―」(『近代日本研究』第37巻)の二本の論文を公刊した。よって,その実績をもって,「(2)おおむね順調に進展している」と評価したい。
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Strategy for Future Research Activity |
下関市立大学より拓殖大学に異動したため,2021年度より所属校が変更となった。それに伴い,東京及びその近郊地域の資料所蔵施設へのアクセスが容易となったことから,前年度以上に積極的な資料収集及びその分析が可能となると考えている。これまでの研究により,戦前期日本の新卒向け労働市場における選抜については,高等教育機関内での選考が重要な役割を果たしていることが解明されたので,2021年度はその具体的な諸相について検討を加えたい。加えて,所属校の特性を活かし,戦前期日本の高等教育機関からの人材供給の実態について,国内のみならず,東アジア全体を視野に入れた研究に着手したいと考えている。具体的には,拓殖大学出身者の就業実態を検討することを計画している。それにより,既発の研究の相対化を図るとともに,包括的視野から,学卒企業家集団の機能と役割について検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度は,新型コロナウィルスの感染による社会一般の活動停滞及び所属機関による出張等の自粛に計画していた調査をすべて実施することができなかった。また,研究分野の特性上,学生などのアルバイトを雇用した大規模調査も必要とされるが,こうした活動も同様の理由から遂行できなかった。2021年度は,社会情勢を鑑みつつ,前年度留保した資料調査も併せて行う予定である。
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Research Products
(8 results)