2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本蚕糸業と地域社会ー天龍社資料を中心としてー
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20K13551
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Research Institution | The Iida City Institute of Historical Research |
Principal Investigator |
太田 仙一 飯田市歴史研究所, 研究部, 研究員 (60826147)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経済史 / 経営史 / 蚕糸業史 / 戦後史 |
Outline of Annual Research Achievements |
天龍社の戦後の経営に関して、農家への技術指導を担当した蚕業技術員に着目して分析を進めた。その成果の一部を飯田市歴史研究所年報18号において「天龍社の盛衰と蚕業技術員の機能」にまとめ発表した。農家の動向を把握し, その意向を時に天龍社に対して代弁する役割も担う蚕業技術員の役割を明らかにした。また、天龍社の経営について、全国的な蚕糸政策が及ぼした影響を含めて分析する必要性に着目し、繭糸価格安定法の果たした役割について検討を開始した。それに関して、11月に開催した飯田市歴史研究所定例研究会にて「1950年代における天龍社の経営ー繭糸価格安定法の成立とその下での運営についての検討のはじめとしてー」として報告を行い、参加者から意見を得た。 また、蚕糸業に関しての理解を深めるため、飯田市歴史研究所が刊行した『史料で読む飯田・下伊那の歴史2 川路のあゆみ 近世から近代へ』の中で、「蚕糸業組合法の制定と川路」という史料を分析した小論考を執筆した。飯田下伊那の地域社会における蚕糸業について、戦前に制定された蚕糸業組合法がどのような影響を及ぼしたのかに着目して検討を行った。これを通して、国の蚕糸政策の変更が、地域の動向に及ぼす影響の大きさについて確認することができた。戦後の天龍社の経営面でも、繭糸価格安定法をはじめとする国家の蚕糸政策は大きな影響を及ぼしている。天龍社の戦後を分析する上でも重要な視点であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、当初予定していた天龍社資料の目録作成と、聞き取り調査の実施に関しては、新型コロナウイルス感染症対策のため十分に実施することができなかった。しkしその分、先行研究の分析と資料の読解に努め、その内容を論考や研究報告の形で発表することができた。蚕業技術員に関しては、天龍社の組織の中での位置づけと経営上になった役割について一定の見通しを得ることができており、おおむね順調な進捗状況であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の課題でもあった天龍社資料の再整理・目録作成事業に着手し完成させることを大きな課題として取り組みたい。並行して、天龍社資料の分析を進め、主に1950年代における天龍社の経営について、農村社会とのかかわりに着目して研究を進めたい。組合製糸という営業形態の中で、出資者でもある農村の側がどのような要望を天龍社の経営に対して抱き反映させようとしたのかを明らかとしたい。これらの成果を、外部の学会で報告してフィードバックを得ることも目標の1つとしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため、東京などへの資料調査を行うことができなかった。同様に、天龍社資料の目録作成を計画していたが、コロナウイルス感染症対策のため目録作成などを委託することがでいなかったため、書籍代以外に経費を使用することができなかった。今年度は、コロナの状況を見つつ、天龍社資料の目録作成のための箱・PCなどの購入、目録作成補助者への謝金、他地域への資料調査の旅費などに使用する。
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Research Products
(3 results)