2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13561
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
今井 希 大阪府立大学, 経済学研究科, 准教授 (60610508)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦略形成 / 戦略プランニング / 実践としての戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、経営戦略形成の経験的研究を実施するにあたって必要となる先行研究の検討について、特に戦略プランニング(strategic planning)に関わる先行研究の整理を行った。具体的内容は以下の通りである。 戦略プランニングは実務的に広く利用されているツールであるが、学術研究においては、あまり関心が高いとは言えない状況にある(Whittington and Cailuet, 2008)。その一つの要因としてMintzbergらによる一連の戦略プランニング批判があることが指摘されている(Wolf and Floyd, 2017)。Mintzbergによる批判以降、戦略プランニングは未来を予測可能にするものというよりも、組織を調整するための手法としての側面に焦点があてられるようになった。この研究状況において、2000年以降の戦略プランニングに注目したのは「実践としての戦略(Strategy as Practice)」と呼ばれるアプローチであった。このアプローチでは、戦略プランニングの具体的な場面において、それに従事する人々が行う行為を具体的に明らかにしてきた(e.g. Jarzabkowski and Kaplan, 2015)。これら「実践としての戦略」による研究は、戦略プランニングプロセスを分解し個々の場面における人々の行為を詳細に分析しているが、戦略プランニング活動全体としての役割について十分に議論されているわけではない。これに対し、近年、経営戦略が企業の未来に関する決定を行うという側面に注目し、経営戦略における未来の位置づけについて少しづつ検討が進んでいる(e.g. Doganova and Kornberger, 2021; Beckert, 2021)。これらの研究の知見を踏まえて、戦略プランニングにおける未来の位置づけに関する検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請当初は、研究初年度より経験的研究に向けた具体的準備を研究計画に盛り込んでいた。しかし、2020年4月の段階で、2020年度はコロナウイルスの蔓延により調査の準備を行うことが難しいと判断したため、交付申請書には、2020年度は理論的研究を中心に研究を進めることを明記した。2020年度はここで明記した通り経営戦略の形成や戦略プランニングに関する先行研究を中心に検討を進めており、ここまでの研究状況を踏まえると、研究としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に引き続き理論的検討を進めるとともに、経験的研究としてアクションリサーチを開始する予定としている。また、2022年度はアクションリサーチを通じて得た知見を踏まえて理論的検討をさらに進める予定としている。 今後の研究の推進に向けて、現在懸念されることは、このコロナウイルスの蔓延する状況下において経験的研究をいかに行うことができるかという点である。当初の研究計画では、アクションリサーチの調査先として北海道にある企業を想定していた。しかし、アクションリサーチは調査対象とのインテンシヴなコミュニケーションが必要となることから、現在の感染状況を踏まえると、北海道への移動を行い調査を実施することは難しくなる恐れがある。 この状況への対応策として、一つは調査対象企業を変更することが考えられる。より移動を行いやすい近畿圏の企業を調査対象企業として選び、アクションリサーチを実施するという方策である。ただ、この状況下でアクションリサーチを受け入れる企業が出てこない可能性も考えられる。そのための対応策としては、経験的研究をアクションリサーチ以外の方法で行うと同時に、経営戦略形成のアクションリサーチに関する方法論の検討を進めるという方策が考えられる。本研究の目的は、(1)経営戦略概念の再検討、ならびに(2)経営戦略形成、再形成を具体的に明らかにすることである。特に二つ目の目的についてはアクションリサーチを通じた知見を得ることができれば理想的であるが、アクションリサーチ以外の方法を通じて経験的研究を行ったとしても目的の達成は可能であると考えられる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては以下のとおりである。使用額が生じているのは、主に旅費、人件費・謝金の項目であるが、旅費についてはコロナウイルスの蔓延により、当初旅費を使用して対面で行う予定であった調査を、オンラインで行うこととなったため次年度使用額が生じている。また、人件費や謝金については、これらの費用を使用して行う予定であった作業を、コロナウイルス感染を予防するために、他人に依頼するのではなく、自身で行ったために次年度使用額が生じることとなった。これらの費用項目について、次年度では旅費については調査対象へのヒアリングや学会への参加、人件費・謝金については、経験的研究の中で取得したインタビューデータの文字起こしや資料の整理といった目的に使用する計画である。また、これらの助成金についてはコロナウイルスへの感染対策を十分に行ったうえで使用する。
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