2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13561
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
今井 希 大阪府立大学, 経済学研究科, 准教授 (60610508)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経営戦略 / 実践としての戦略 / 戦略形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、「実践としての戦略(Strategy as Practice: SaP)」と呼ばれるアプローチについて先行研究の整理を行い、検討課題の提示を行った。 SaPの主要な研究では、経営戦略を「人々が行うなんらかのこと」として捉え、経営戦略の形成や変化を、様々なツールやルールを利用しながら経営戦略の形成や変化に従事するさまざまな人々の行為に着目して検討を行ってきた(e.g. Johnson et al, 2007; Kaplan, 2011)。これらの研究では、Whittington(2006)で「戦略のプラクシス(strategy praxis)」とされる、経営戦略に関わる様々な場面が分析の対象となっているが、分析対象が戦略に関わると言えるのかについては十分に検討されていない。そもそもSaPでは人々の行いを経営戦略として捉えるが、経営戦略をこのように捉えると経営戦略/非戦略の区別がつかなくなる。このようにSaPの主要な研究では経営戦略概念の検討が不十分であるといえる。これに対して経営戦略論や経営戦略概念に対するアプローチはSimon(2001)や、Knights and Morgan(1991)のようにSaPが自らのアプローチに対する重要な先行研究として位置付ける研究では少ないながらも行われてきた。このようなSaPの議論では取りこぼされてきた論点に着目することで、経営戦略概念に関する検討を進展させることができるのではないかと考えられる。 上記の検討を踏まえて、本研究では経営戦略概念の登場と、経営戦略の企業経営への導入に伴う、経営戦略概念に対する理解のあり方ならびに実践の変化について検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の当初の計画では、先行研究の検討を行うとともに、経験的研究であるアクションリサーチを本格的に実施する予定であった。しかし、経験的研究の実施に対する準備は行っていたもののcovid19の蔓延により、アクションリサーチを確保することが困難となった。そのため研究計画の大幅な見直しを余儀なくされた。本研究の目的は経営戦略概念の検討であることを踏まえ、関係者へのインタビュー調査ならびに文献研究を通じて日本企業における経営戦略概念の理解を経時的に明らかにすることへ計画を変更し、研究を進めることとした。計画の変更に伴い、これまでに行ってきた先行研究を見直す必要が生じるとともに、経験的研究に向けた方法、方法論の検討、資料の収集・整理等の作業が新たに生じているため、本研究課題の進捗は当初の計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に、経験的研究を行う上でのデータの入手方法について、アクションリサーチからインタビュー調査ならびに文献資料へと変更されることとなった。これによって、covid19等によりデータの獲得、ひいては経験的研究の実施が困難となることは避けることができると考えられる。 今後の研究の推進については、現在行っている先行研究の検討については引き続き進めるとともに、新たに新しい経験的研究に対する方法論的検討、方法の検討を行う。また、これらの検討と並行して、文献資料の入手ならびにインタビュー調査を実施する。上記の検討について、先行研究の検討、方法論に関する検討、経験的研究の分析結果については、それぞれ公刊論文、ディスカッションペーパーなどで取りまとめることを予定している。
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Causes of Carryover |
本研究を遂行するにあたり、経験的研究ではインタビュー調査ならびに文献調査を実施する。実施にあたり、物品費、旅費、謝金を計上している。物品費については、まず文献資料の入手に必要となる。日本に経営戦略という用語が入ってきたのは1960年代初頭であるが、本研究では日本企業における経営戦略の理解のあり方を経時的に検討するため、1950年代後半以降の文献資料を入手する必要がある。また、各データを整理、保管するためにスタンドアローン型のPCを準備する必要がある。次に、旅費については、今般の事情より、学会はオンラインでの開催のため旅費を必要としない場合も多いが、成果報告のための学会参加の旅費、ならびにインタビュー調査を行うために必要となる。最後に、謝金については、インタビューデータの文字起こしのために必要となる。
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