2022 Fiscal Year Research-status Report
ビジネス達成場面の従業員帰属行動モデルの再構築-国際比較の視点からー
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20K13567
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Research Institution | Tsukuba Gakuin University |
Principal Investigator |
徐 毅菁 筑波学院大学, 経営情報学部, 助教 (30780283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 失敗 / 帰属理論 / 国際比較 / ローカスオブコントロール / モチベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ネガティブな遂行結果に対する個人の原因帰属行動はその後の行動に大きく影響する。また、その帰属行動における個体差、換言すれば帰属傾向を1種の個人属性として捉えることができる。その性質を解明することは、とくに不確実性の高まる外部環境において、従業員のレジリエンスやモチベーション、しいては生産性の向上に寄与することができる。なお、令和4年度の成果は主に以下の示す通り: ①主に英文献に散見するfailureとerrorの混用によるジングルとジャングルの誤謬に対し、複数の分野を横断して文献を整理した上、本研究が扱う「失敗」を個人が達成場面において「望ましくない結果」と定義した。 ②前年度に構築したフレームワークを検証するため、日本国内のホワイトカラー従業員を対象にインタビュー調査を2022年5月~6月に実施し、個人の異文化経験、帰属傾向と個人属性(レジリエンス・達成動機・学習志向・失敗不安)、上司行動(配慮&構造づくり)ならびに組織変数(組織風土・組織的支援)の関係を検証し、仮設は部分的に支持されたが、特に組織レベルの変数に関して、まだ解明できていない課題もあり、追加的な調査が必要と思われる。 ③時系列データの比較・分析により、大きく環境が変化する際に、個人の帰属傾向が変化することが確認された。換言すれば、帰属傾向は性別や価値観などの属人的要因くならびに国の文化や市場環境から影響を受ける比較的に安定でありながら、可変的な個人属性であることが明らかになった。 ④3項の結論に基づき、Weiner(1979)の帰属理論を理論的根拠とする本研究のフレームワークを再修正し、4つの帰属要因のネーミングを改変した。そのうえRybowiakら(1999)のerror orientationを援用し、帰属傾向尺度V2を作成した。 ⑤2023年4月、インターネット経由で中国調査の一部を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定では、令和4年度に本研究を完了させる予定であったが、現状では①社会情勢の影響と②新たに得た知見の2点が原因でスケジュールを調整したため、やや遅れが生じている。 具体的に、当初の予測より遅くコロナに関する規制は徐々に緩和されたものの、長期化したコロナ禍の影響を受け、社会生産活動そのものがまさに変貌している最中である。その影響を受け、当初協力を承諾した企業および個人の一部(特にアメリカ方面)が協力できなくなった問題が生じたゆえ、現在新たな協力者の確保に取り掛かっている。 それだけでなく、一般企業の従業員の職務モチベーションを目的変数とする本研究におかれまして、上述した不安定の状態で調査を実施すると、収集されたデータの信ぴょう性ならびに価値ともに損なわれる懸念がある。 加えて、日本調査では、外部環境が大きく変貌する際に個人の帰属傾向も影響されることが検証された。その発見により、帰属傾向の個人属性としての性格を検討・定義する必要性が生じた。 上述した理由のうけ、調査のスケジュールを調整し、さらに追加的な文献レビューやフレームワーク・オリジナル尺度修正の所要時間と合わせて、本年度内に日本調査・中国調査(インターネット経由の部分のみ)を終了し、海外の現地調査を翌年度7月以降に延期することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、手元のデータ(日中両国)の分析を進めるっとともに、帰属傾向とRotter(1966)のLocus of control、Dweckら(1988)のImplicit theories of intelligenceの定義、構成次元および互換性を体系的に検討する。 それらの結論を踏まえ、令和5年度では海外の現地調査を積極的に進める考えである。現状では、打ち合わせ等を含め、調査の殆どはオンラインで行われているが、その限界(特にインタビュー調査の場合、収集できる非言語的情報の量がかなり制限される)を痛感している。よって、令和5年度の8月に中国調査、2月にアメリカ調査を計画し、量的データおよび質的データ両方の収集を目標としている。
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Causes of Carryover |
理由:①本来年度内に中国およびアメリカに渡航して調査を実施する予定でしたが、コロナ情勢の影響および本研究の性格により、次年度に延期することとなり、その分の旅費が未支出となりました。②研究の打ち合わせや国内学会が一部オンライン参加を認めたため、その分の旅費は発生しませんでした。 今後の計画:まず手元にある中国調査(オンライン実施分)のデータ分析、日本調査との比較を行った上、日本国内のホワイトカラー従業員を対象に、追加的なヒアリング調査を実施し、8月に中国現地調査を行う。その後、秋セメスター中はこれまでのデータを整理・比較・分析し、また、必要に応じて文献を適合にレビューするとともに、アメリカの現地調査における新たな協力者(前項でも触れましたが、本来アンケート調査を行う予定の企業がアメリカ市場から撤退したため)の確保の取り組む。なお、1月に予定するアメリカ調査までに充分な協力企業を確保できなければ、現地研究者との打ち合わせおよび少人数のインタビュー調査のみの可能性はある。すべての調査が終了後、全体のまとめと論文の執筆に専念し、より広い範囲における成果の公表に努める。
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