2023 Fiscal Year Research-status Report
ビジネス達成場面の従業員帰属行動モデルの再構築-国際比較の視点からー
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20K13567
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
徐 毅菁 東洋大学, 経営学部, 助教 (30780283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 帰属理論 / 失敗 / モチベーション / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネガティブな遂行結果に対する個人の原因帰属行動はその後の行動に大きく影響する。また、その帰属行動における個体差、換言すれば「失敗帰属傾向」を個人属性として捉えることができる。UVCA時代と呼ばれる現代社会において、従業員の帰属傾向の性質およびその規定要因を解明することが、個人のレジリエンスや持続的モチベーション、しいては生産性の向上に寄与することが期待できる。なお、令和5年度の成果は主に以下の示す通り: ①特に英文献に散見されるfailureとerrorの混用によるジングルとジャングルの誤謬に対し、複数の分野を横断して文献を整理した上、「失敗」と「エラー」の違いを明確にし、本研究の扱う失敗を再定義した。 ②上述した定義に合わせ、既存する複数の失敗帰属傾向の測定尺度を一部修正・加筆したうえに比較を行い、失敗帰属傾向の因果次元構造(2次元4要因)の妥当性を確認した。 ③2012年と2022年調査で得られたデータを用いて比較分析を行った。当該調査はそれぞれ日本と中国で実施されたため、時系列の変化に加え、従業員の国籍および勤務地がもたらす影響も検討した。その結果、個人の帰属傾向が単なる加齢より、外部環境の変化に影響を受ける比較的安定でありながら、可変的な属人的変数であることが認められた。さらに、同じような事態(COVID-19)に対して中国企業に務める従業員と日本企業に務める従業員の帰属傾向が異なる変化を示した。 ④上項で確認した勤務地による差異の原因を特定するため、中国と日本の一般企業に務めるホワイトカラー従業員を対象に追加的なインタビュー調査を実施し、企業制度と失敗帰属変更の関係を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定では、令和5年度に本研究を完了させる予定であったが、現状では①社会情勢の影響と②新たに得た知見の2点が原因でスケジュールを調整したため、やや遅れが生じている。 具体的に、現状ではコロナに関する規制は緩和されたものの、ニューノーマルとして新たな勤務体制や価値観が定着し、社会生産活動そのものが変貌している。よって、これまでの調査結果や結論の妥当性について、再検討する必要性が生じた。 他方、当初予定していたアメリカ調査について、協力を承諾した企業自体が撤退したことを受け、別の調査協力者の獲得に務めたが前向きな返事を得られなかった。そのため不本意ながら調査計画の一部の取り止めが決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
前項で述べたように、COVID-19による外部経済環境や働き方の変化が、個人の失敗帰属傾向そのものに影響を与えていることがこれまでの調査で明らかになった。しかし、なぜ具体的なメカニズムについてまだ未解明な部分が多い。今後はそこに焦点を当て、組織レベルから働き方改革、とりわけテレワークが従業員の失敗帰属傾向及びその後の持続的モチベーションにどのように影響するのか、定性&定量の両方から検証する予定である。
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Causes of Carryover |
変更が生じた理由として、予定していたアメリカ調査は協力企業がコロナ禍の影響を受けて事業撤退が決め、また代替する企業を確保できなかったため調査を取り止めたことから、その分の旅費が発生しなかったのである。 今後の使用計画として、コロナの蔓延によって企業の制度や働き方の変更が従業員個人の失敗帰属傾向に及ぼす影響に注目し、中国と日本両国のホワイトカラー従業員を対象に、先述した変数の関係性を定量&定性両方から調査・分析する。さらにそこから得られた知見を論文にし、国内外の学会発表に予算を使う予定である。
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