2020 Fiscal Year Research-status Report
感性消費型製品開発における「模倣」と「仮想」による暗黙知表出化の究明
Project/Area Number |
20K13582
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Research Institution | National Institute of Science and Technology Policy |
Principal Investigator |
氏田 壮一郎 文部科学省科学技術・学術政策研究所, 第2研究グループ, 主任研究官 (30599402)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経営学 / 製品開発 / 暗黙知 / 表出化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は新型コロナウイルス感染症対策のため、企業への取材や現場視察などを計画通りに実施することができず、これまで収集した資料や情報、先行研究をもとに仮説の検証を中心に行った。内容としては次のとおりである。味覚や聴覚、触覚などの人の感覚を便益とする製品の開発において目標となるのは、人が便益と感じる特定の感覚を製品利用時に再現できることである。この感覚は比喩できる表現がある方が、開発の冗長性を抑制できるものと考えられる。さらにこの比喩については、抽象的な表現よりは、例えば炊飯器開発における “かまどの味” など誰もが共通の感覚をイメージできるような具体的な表現のほうが、類推などの過程や開発が多くの部署との共同作業である点を考察した場合、好ましいものと言える。このような開発の効率性を高める比喩表現には、いくつかの条件があることが仮説として考察できた。また組織が既に感覚を共有できている場合もあり、比喩だけでなくこのような感覚的な共有がどのように実現されてきたかも分析の範囲に入れて今後は考察する。本研究では、「模倣」または「仮想」の二つの視点を通して、暗黙知の冗長的な表出化をどのように促進させるかといった問いを中心にしているが、これら視点は分離して考察することが難しく、設定した比喩の模倣から製品の構造を仮想するなど、考察をさらに進めている。また現状としては単一の事例でのみ分析できている状態ではあるが、今後は事例を増やして一般概念化を進めて行く必要がある。 これら考察した内容について議論を行うため、本年は口頭による学会発表を行った。 これら学会発表や各種の議論の結果、先行研究のさらなる分析の必要性などいくつか課題を見つけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、企業取材などによる新しいデータの収集が難しい状況の中、初年度の計画として先行研究などの分析を進め仮説の設定までを行うことができた。暗黙知の表出化において必要となる比喩の整理や類推の過程をある程度整理できたと考えている。 また学会発表などでも、暗黙知の表出化や開発冗長性の抑制に関して、いくつか示唆を得ることができ、本年はまずまずの進捗であったと考えている。ただし課題としては、事例分析を中心としているため一般概念化において課題があることや、先行研究についての整理が不十分であり、次年度はこれを考慮することを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
製品開発における先行研究は膨大で、様々な分野との融合などもあり複雑多様なっている。これら先行研究を整理したうえで、本研究の課題と学術的な意義を整合させる作業も必要であると考えている。一方で本研究は事例分析を中心としているが、一般概念化のためには、ある程度の事例の数が必要であると考えている。そのため今後の研究の推進方策としては、先行研究の継続的な整理と、取材事例を充実させることに焦点を当てる予定である。
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Causes of Carryover |
オンラインによる学会発表などが可能となったため旅費が発生しなかった。これら繰越については来年または最終年に旅費として利用する予定にしている。
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Research Products
(2 results)