2021 Fiscal Year Research-status Report
計画的変革、創発的変革を統合したラディカルな組織変革に関する研究
Project/Area Number |
20K13603
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Research Institution | Chukyo Gakuin University |
Principal Investigator |
古田 成志 中京学院大学, 経営学部, 准教授 (60706729)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 組織変革 / ラディカルな組織変革 / 計画的変革 / 創発的変革 / テキストマイニング / 有価証券報告書 / 組織のライフサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下の2点である。 ①ラディカルな組織変革における文献レビューの精緻化 ラディカルな組織変革の仕組みをより明確にするために、計画的、創発的変革を統合した視点に関する文献レビューを昨年度に引き続き実施した。計画的、創発的変革を結びつける視点の一つにパラドックスが挙げられる。近年のラディカルな組織変革研究では、パラドックスを取り入れる視点が重要であるとみなされている。具体的には、パラドックスが実現可能となる要因、経時的に変化するパラドックス、パラドックスのあり方の変化の研究をレビューすることで重要性を導出した。パラドックスを踏まえたラディカルな組織変革研究の発展過程を整理した議論は2022年度組織学会年次大会で報告を行い、2022年7月刊行予定である『組織論レビュー』(白桃書房)にてレビュー論文として発表する予定である。 ②新型コロナウイルス感染症による経営環境の認識 ラディカルな組織変革はトップマネジメントによる経営環境の認識が先行要因の一つとされている。そこで、企業経営のあり方を大きく変えた新型コロナウイルス感染症の影響に着目した。有価証券報告書に記載されている「経営環境」の記述をデータとして収集し、テキストマイニングによる分析を実施してコロナ禍の経営環境を検証した。東証一部上場企業を対象としているが、比較するための視点としてキャッシュフローによるライフサイクルの分類を用いている。2020年期、2021年期のキャッシュフローの数値を用い、対象となる企業それぞれの段階を整理した。本年度は成長期に該当する企業の経営環境を中心に検証したが、ライフサイクルの段階に応じて経営環境の認識に差がみられたことが明らかになった。例えば成長期から成熟期へ移行した企業は成長期に留まる企業と比較して、「変化」という言葉を好意的に捉えている一方、「状況」という言葉を否定的に捉えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テキストマイニングを用いた経営環境の検証において、本年度はキャッシュフローの数値を用いて該当企業の段階の整理を行い、組織のライフサイクルにおける成長期の企業を中心とした分析を行うことができた。しかし、成熟期など他のライフサイクルの段階における検証には至らなかった。また、インタビュー調査を中心とした事例研究も新型コロナウイルス感染症の影響で進展できなかった。したがって、「やや遅れている」状況であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
組織のライフサイクルの視点を用いて成熟期に該当する企業など他の段階における経営環境の認識を検証し、ラディカルな組織変革における先行要因の具現化をより詳細に検討することを試みる。また、本研究をこれまで遂行してきた中で、ラディカルな組織変革を実施する企業は計画的、創発的な視点でそれぞれ課題を抱えている。このような特徴を備えた企業を選定し、事例研究の進展を試みる。次年度は本研究の最終年度であるため、上記の点を重要課題と位置づける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、所属する学会のオンライン化、およびインタビュー調査の遅滞により旅費、謝金を使用することがなかった。 次年度は本研究の最終年度であるため、インタビュー調査に係る旅費、謝金を中心に使用する計画である。
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