2021 Fiscal Year Research-status Report
A study on how accountability in social business impacts on sustainable management
Project/Area Number |
20K13606
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
中嶋 貴子 大阪商業大学, 公共学部, 講師 (90802736)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソーシャル・ビジネス / NPO / アカウンタビリティ / 経営持続性 / マルチステークホルダー / プログラム・オフィサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ソーシャル・ビジネスを実践するNPOや社会的企業によるアカウンタビリティの履行が組織内外のステークホルダーにどのような変化を及ぼし、組織の経営持続性に影響を与えるのか検証することを目的として研究を進めている。研究2年目では、外部資金の受入がどのようにソーシャル・ビジネスの実践者であるNPOや社会的企業に影響を及ぼす可能性があるのか、活動資金の供給にのみ終始しやすい行政補助金よりも、直接的に影響を受ける可能性が高い民間助成金の収受に焦点を当てて、効率的に研究活動を推進するために研究協力体制の構築と調査対象者への選定とヒアリング等によるプレ調査を実施した。 調査の結果、地域や社会が抱える社会的課題への問題解決手段として、事業やサービスを提供するソーシャル・ビジネスは、団体が直接受け入れた寄付のほか、官民による助成や補助金が活用されているほか、組織形態についても、住民組織などの任意団体、NPO法人、社団法人・財団法人、株式会社といった、多様な組織を介して市場に供給されていることが確認された。また、資金の収受を契機として、民間助成団体のプログラム・オフィサー(助成元の団体に属し、助成事業の企画、運営、助成先団体への助言など行う担当者)が多様な役割を担っていることが確認された。ただし、資金供給者である助成財団とプログラム・オフィサーの役割については、属する組織や助成事業により多様性が存在することがこれまでの調査から示唆されていることから、引き続き、民間助成団体とプログラム・オフィサーがソーシャル・ビジネスの市場形成や各組織の経営持続性、アカウンタビリティーの形成に及ぼす影響について研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究から、組織内外の多様なステークホルダーと連携を図りつつ組織の経営方針を検討し、説明責任を果たそうとするマルチ・ステークホルダー理論を用いる組織では、経営持続性に寄与する財務構造の構築と組織内外の利害調整機能が効率的に機能している可能性が示唆されている。この結果を踏まえて、中長期に及ぶ組織の経営に対する民間資金の供給が組織に与える影響を検証するために、資金提供者である民間助成財団が一定の役割を有することが確認されたことから、新たな研究体制を構築し、研究課題を発展させた。新たな研究体制にもとづく調査は、東日本大震災の発災当時から、全国規模で民間助成に取り組んできた助成団体と各組織のプログラム・オフィサーの協力を得て行われた。ここでは、東日本大震災発生時から10年間を対象に、主要な民間助成団体とプログラム・オフィサーの活動調査を実施した。調査の結果、プログラム・オフィサーが甚大災害時における民間組織の主体的な支援活動の実施や継続に一定の役割を果たしたことが確認された。これらは研究成果としてとりまとめ、国内学会と英文論文(オープンアクセス)により発表された。 今後の研究については、民間助成団体の関係者やプログラム・オフィサーらの研究協力を得て、研究を継続するほか、新たに他大学の研究所において研究員を兼務することにより、研究体制を強化するだけでなく、他分野の研究者やソーシャル・ビジネスの実践者らによる本研究への助言を得やすい環境を整備した。
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Strategy for Future Research Activity |
構築された新たな研究体制を活用し、調査対象者の選定とヒアリング調査を進める。 これまでの研究において、アカウンタビリティーの形成には、各組織だけでなく市民セクター、非営利セクター、ソーシャルセクターといった広域な民間活動を形成した社会背景が影響を及ぼしたという示唆を得ている。そのため、今後は、個々の組織に対する調査だけでなく、ソーシャル・ビジネスの形成に影響を及ぼしたと考えられる主要な社会背景についても調査を進め、民間セクターの形成過程を俯瞰的に確認しながら、ソーシャル・ビジネスの発展経緯や経営持続性についても、検証を試みる。得られた研究成果については、国内外の学会、学術論文等を通じて、広く社会に発信していく予定である。 なお、資金供給者である助成財団とプログラム・オフィサーの役割については、属する組織や助成事業により多様性が存在することがこれまでの調査から示唆されていることから、引き続き、民間助成団体とプログラム・オフィサーがソーシャル・ビジネスの市場形成や各組織の経営持続性、アカウンタビリティーの形成に及ぼす影響について研究を進める。また、資金の受入側であり、ソーシャル・ビジネスの生産者である民間組織の経営持続性については、これまでの研究成果を踏まえて、財務データのみならず、資金供給者との関係性、ステークホルダーとの関係性を考慮しながら検証を進める予定である。 以上のとおり、本研究では、資金の受入側と供給側の両面から調査を進めることにより、研究目的であるソーシャル・ビジネスを実践するNPOや社会的企業によるアカウンタビリティの履行が組織内外のステークホルダーにどのような変化を及ぼし、組織の経営持続性に影響を与えているのか引き続き検証を試みる。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症蔓延防止措置により、国内外の調査旅費および学会参加にかかる旅費について、一部の研究計画に変更が生じたほか、オンライン大会への開催による旅費の軽減が図られたため計画経費との差額が生じている。 次年度は、新しい研究調査体制及び調査計画にもとづき、主に国内調査旅費、ヒアリング謝金、データ分析及び英文校閲費、調査研究の推進及び研究成果の発信に繰越された財源を用いる予定である。
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Research Products
(14 results)
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[Book] 寄付白書20212021
Author(s)
日本ファンドレイジング協会編
Total Pages
153
Publisher
日本ファンドレイジング協会
ISBN
9784907431136