2020 Fiscal Year Research-status Report
位置情報を利用した価格プロモーションに対する消費者の商圏内買い回り行動の理解
Project/Area Number |
20K13616
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加藤 諒 神戸大学, 計算社会科学研究センター, 准教授 (30823843)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 位置情報 / 価格プロモーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、GPSによる位置情報と、複数店舗の購買履歴情報を用いて、消費者の商圏内の買い回り行動を理解することと、それに付随する小売店舗の価格戦略との関連性を探ることである。従来のマーケティング研究では、クーポンやチラシ配布といった価格戦略の効果に関する研究が蓄積されている。しかしこれらの研究では、競合店舗のデータが利用できないことから競合店舗の存在が考慮されていない。通常消費者は、複数店舗から訪問店舗を選択すると考えられ、競合店舗の存在を考慮しない場合、クーポンといったプロモーションに対する弾力性が正しく推定されず、価格戦略の本当の効果を把握することはできない。そこで本研究では、①GPSによる位置情報と、②複数店舗の購買履歴情報、③複数店舗の価格情報を入手すること、などにより、競合店舗の存在を考慮した商圏レベルの包括的な条件の下での価格戦略の効果を明らかにすることを目的とする。 本年度は最終目標に対する前段階として、位置情報に連動した広告の効果測定に関する研究を行った。現在この内容について解析を行っており、消費者の文脈的な側面が広告の効果により影響を与えていることが明らかとなった。現在この内容に関する論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位置情報に連動する価格プロモーションデータについて取得を行い、予定通りデータ解析を行っている。その結果、消費者の文脈的な側面が広告の効果により影響を与えていることが明らかとなった。現在までは、この内容に関する論文を執筆中である。なお、本研究では民間企業から提供されるデータを利用している。昨今のCOVID-19の流行に付随する社会的状況により、一時民間企業からのデータの取得が困難となったが、代替データを取得することにより、おおむね順調に研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、このクーポン(広告)の効果は、競合店舗の顧客に対しても有効であるのか、つまり、店舗の発行するクーポンによって競合店舗の顧客は奪われるのか、という問いを明らかにする。また顧客属性やクーポンのタイプの異質性によってその弾力性が異なるのか、異なる場合その主となる属性は何であるのか、という問いも明らかにする。 今後の研究は、これまでの研究知見を踏まえ、クーポン発券の実験を行う。マーケティング施策の効果を議論する場合には、競合店舗の存在を考慮することが必要不可欠であると思われる。今後は、これまで用いたGPSによる広告データや来店情報に加えて、クーポン情報を利用することでこの問いを明らかにする。特に本研究では、商圏内店舗について実験的にクーポンを発券し、その効果をGPSと購買履歴データから把握する、という方法を取る。これにより、クーポンの自店・競合店への純粋な効果を知ることができ、実験室や単一店舗内などの統制的な環境下での実験ではなく、現実的な消費者の購買行動を想定した研究が可能となる。更に購買履歴データは顧客属性と紐づいていることから、その弾力性の(顧客属性に対する)異質性を知ることも可能となる。
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Causes of Carryover |
昨今のCOVID-19の流行により、学会発表のための海外出張、打ち合わせのための国内出張を行うことができず、次年度使用額が生じた。また、物品費についても、他の研究費で購入したものを当該研究にも一部利用することが可能となったため、その余剰が生じた。
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