2021 Fiscal Year Research-status Report
仮想実験による企業のブランドポートフォリオに関する研究
Project/Area Number |
20K13617
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
山本 涼平 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (50829356)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブランドポートフォリオ / 仮想実験 / コードシェア / ブランド戦略 / 航空サービス / 輸送サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、企業が直面する複数製品(財・サービス)間の差別化、統廃合等の製品戦略問題について、シミュレーションを利用したケーススタディを作成することで解決を試みるものである。 当該年度(研究2年度目)は、主に、昨年度(1年度目)から実施している本邦航空市場の旅客データを用いた研究を継続した。これは航空輸送サービスを提供する航空会社が、自社運航サービスの他に、コードシェアと呼ばれる他社との共同運航によるサービスも提供する事例を対象に、消費者への便益、企業利潤への影響を分析するものである。本邦ではこれが経営破綻した企業の救済施策としても実施されたことを踏まえ、特に企業利潤に着目した。昨年度末から当該年度当初にかけて論文として取りまとめ、国際学術誌に投稿したものの査読の結果として不採択であったため、当該年度はこれの修正と分析の追加等を実施した。また、航空輸送は各社が多市場においてサービスを提供するため、複数社が多市場で競合することになっている。こうした環境が企業のサービス価格に与える影響に関する分析も実施し、別論文として取りまとめ、航空輸送に関する国際学会であるAir Transport Research Societyで発表を行なった。 研究計画にある、企業(航空輸送を対象とした)が複数サービスを提供するにあたっての共喰いの回避に関する分析は、分析シナリオの作成と数値計算手続の作成までを行なったが、まだ計算結果を得られていない。 他の関連研究として、船社の航路サービスの統廃合問題をモデル分析した研究を取りまとめた。企業間提携によって、船社はより小型の船舶によるサービスを増やし、ハブ・スポーク型の航路サービスへ統合することによって利益を拡大できることが示された。この研究も国際学術誌に再投稿する準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」にも記載した通り、当該年度は本研究課題に関連する論文の3点を取りまとめ、国際学術誌へ投稿することができた。しかし、査読の結果としてどれも不採択となり、査読者からのコメントを参考に分析の修正、必要な改訂等を行なった。これらの修正作業が重複してしまったことで作業が分散し、複数製品間での共喰いの回避方策に関する分析と、より一般化したブランドポートフォリオに関する分析が計画よりもやや遅れてしまった。計画では、当該年度の後半には両者について数値計算を完了したいとしていたが、シナリオの作成と計算手続きの作成に留まってしまい、計算を終えることができなかった。そのため、当該年度までの進捗としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、改訂中の論文3点を次年度(3年度目)の早いうちに再投稿し、査読付きの成果として確立させなければならない。 シミュレーションが着手できていない「共喰いの回避方策に関する分析」と「より一般化したブランドポートフォリオに関する分析」については、ケーススタディのシナリオ作成と計算手続きの考案はできているので、上記3点を学術誌に再投稿した後、先行する成果論文の査読結果を待つ間に順次取りかかりたい。分析に必要なデータセットもこれまでに作成できているので、次年度前半には数値計算を行なって結果を解釈し、後半に論文としての成果の取りまとめを行なう計画としたい。昨年度の「実施状況報告書」では研究進捗に余裕があれば他産業のデータの利用も検討したいと記載したが、「現在までの進捗状況」の通り進捗がやや遅れているので、まずは現在取り組んでいる航空輸送市場を対象とした分析の遂行に注力することとしたい。
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Causes of Carryover |
当該年度は、数値計算に必要な統計解析ソフトウェアの保守更新、取りまとめた論文の英文校正等に助成金を使用した(所属機関の規定により「その他」経費として計上されている)。当初、オーストラリアで開催されるはずであった国際会議(Air Transport Research Society)で研究発表を行なうための旅費を支出する計画であったが、昨年度来の新型コロナウイルス感染症拡大の影響でオンライン開催となり、この分の旅費が発生しなかった。国内開催の学会や研究会も引き続きオンライン開催となったことから未使用額が増えている。 次年度は、統計解析ソフトウェアの保守更新、論文を改訂したことによる英文再校正への支出が予定される。また、当該助成を受ける以前に購入し、当該研究課題の遂行でも使用していたノートパソコンが老朽化したため、学外での研究作業(研究発表、資料収集等)に支障が出ている。次年度の初期に、この機材更新に支出する計画である。学会・研究会等も対面開催が再開され始めているので、旅費の支出も計画される。
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