2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13623
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
古川 裕康 日本大学, 経済学部, 准教授 (10756224)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境・社会配慮型ブランド選択行動 / 理念 / パーパス / ブランド・ビジョン / ブランド・ロイヤルティ / 環境・社会配慮型物質主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,消費者による環境・社会配慮型ブランド選択行動の基礎的なメカニズムについて検討している。昨年度までに消費者によるCEOの認知,そして当該CEOから影響を受けた度合いが高まる程,彼・彼女らが展開する環境・社会配慮型ブランド選択行動が促進されることを発見した。近年,多国籍企業のCEOは自社,そして自社展開ブランドの存在意義を意味する理念やパーパス,ビジョンを積極的に訴求する傾向がある。消費者はCEOの認知,そして彼らから影響を受ける程,同社や展開ブランドの存在意義を理解し,結果として環境・社会配慮型ブランド選択が促進されたと考えられる。 これを踏まえ,本年度では消費者のブランド・ビジョンへの理解と環境・社会配慮型ブランド選択の関係性について検討を進めることにした。なお,ここでのブランド・ビジョンとは企業レベルの理念やパーパスがブランドレベルにまで具体化されたものを意味する。 日本,アメリカ,イギリス,インド,シンガポール,中国の計6ヵ国を対象とした検証の結果,事前の想定通り消費者のブランド・ビジョンへの理解が高まる程,消費者の環境・社会配慮型ブランド選択が促進され,最終的に消費者の当該ブランドに対する忠誠心まで高まる点が全調査対象国で共通していた。 また本年度の検証では,本研究における重要なポイントの一つである物質主義の影響についても併せて検討した。その結果,多くの国々では物質主義の傾向が高まる程,ブランド・ビジョンに対する理解-環境・社会配慮型ブランド選択-ブランド・ロイヤルティの関係が弱まることが確認された。一方で,中国とインドにおいては,物質主義の高まりが同関係を強めているといった結果を確認した。 この結果を解釈するために既存研究のレビューを進めたところ,近年,環境・社会に配慮されたブランドを探し,それらを積極的に収集する消費者の物質主義傾向が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,順調に推移している。ただし研究が進捗するに従い,環境・社会配慮型物質主義の傾向が新興国を中心に発生している現象であることが示唆されたため,当初予定していた調査対象国であるスウェーデンではなく,アジアを中心とした新興国を対象とした検証・調査へ移行することとなった。しかし本研究の核心である消費者による環境・社会配慮型ブランド選択行動の基礎メカニズム解明という点は変わっていない。 今年度の成果としては,昨年度の研究成果がJournal of Global Marketing誌に掲載が決定し,現在早期公開されている。また大学紀要にも1本の論文を掲載し,研究の成果をまとめ,国内外に発信する計画も順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要にて示した通り,本研究を進捗させる中で,環境・社会配慮型物質主義という新しい現象の存在を確認した。これまでの物質主義の消費傾向は,環境や社会に負荷を与えるネガティブな存在として捉えられてきたが,物質主義の対象が環境・社会配慮型ブランドに向く様になれば,環境や社会にとって有益な消費行動となることが考えられる。環境・社会配慮型物質主義の生起条件やプロセスを明らかにすることは,本研究課題とも密接に結びついており,今後の研究における主要な焦点として引き続き検討を続ける。 未だ検証実施前なのでここに詳細を記述することはできないが,具体的にまず環境・社会配慮型の物質主義がなぜ生起するのか理論的な背景から捉え,その先行要因について検討を重ね,調査・分析を重ねながら実際の生起条件について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本年度においては昨年度収集したデータの分析・解釈作業に時間を要したため,年度の後半に予定していた新たな文献研究まで着手することができなかった。全体的には概ね順調に推移しているが,一部着手できなかった点がある。そのため本年度予定していた文献や資料収集ができなかった。本点は次年度に繰り越し,未実施分の調査ができるよう使用額を配分した。
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