2020 Fiscal Year Research-status Report
Empirical study on the factors that cause abusive exercise of shareholder proposal rights and their impact on corporate value
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20K13642
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
久多里 桐子 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (60805654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 株主提案権 / 株主総会 / コーポレート・ガバナンス / 企業価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、株主提案権の濫用的行使が生じる要因と企業価値に与える影響を明らかにすることである。2020年度の研究実績として、以下2点を挙げる。第1に、「数」の面で株主提案権が濫用的に行使された企業の特性について分析を行った。2021年3月に施行された改正会社法では、内容と数という2つの視点から株主提案権に新たな制限が課されることとなった。本年度の分析では、まず「数」の面での権利濫用に着目し、2010年から2019年において株主提案議案が提出された279企業年度を分析対象として、議案を提出した株主の数やその株主が提出した議案の数に応じて5つのサンプルに分類し、各サンプルの財務尺度や株式所有構造を比較した。研究成果について論文を執筆し、複数の査読付き雑誌への投稿を行ったが、いずれも掲載には至らなかった。そのため、以降の年度では「数」だけでなく「内容」も含めて分析を練り直すことで、より新規性および独自性の高い研究結果を提示したいと考えている。 第2に、研究課題と関連する実証研究のレビュー論文を執筆した。アメリカ企業を対象とした実証分析では、株主提案が提出される企業は概して業績が悪く、株主提案が提出されたという情報に対して、市場が期待外の反応を示すとは言えないことが明らかであった。さらに、株主提案の賛成率には、提案者の属性および提案内容に加えて、経営者を含む企業内部者の持株比率や機関投資家持株比率が関連していることなどが確認された。一方で、日本企業を分析対象とした先行研究は数少ないものの、アメリカ企業を分析対象とした先行研究と類似する結果に加えて、前年度に提案を受けた企業が継続して提案を受ける可能性が高いなどの新たな発見事項も得ていた。これらの先行研究の知見は、本研究におけるより適切なリサーチ・デザインの構築に活かす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗に概ね問題はないが、コロナウイルスの流行に伴い、学会および研究会を通じての研究交流が阻害された影響は小さくないと考えている。加えて、オンライン講義の準備など、感染症対策に伴う教育研究機関での業務負担の増大によって、当初研究に充てられるはずだった時間も大幅に割かざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究実績を踏まえて、2021年度は株主提案権の内容に関する分析を行う。レフェリーコメントを反映し、研究成果の学会報告および査読付き論文への再投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの流行にともない学会および研究会が中止ないしオンライン開催となり、予定していた旅費の支出が一切生じなかった。この状況は次年度も継続すると予想されるため、その分の予算を補完的データベースの購入に充てることで、分析をより精緻にすることが可能となると考えている。
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Research Products
(1 results)