2022 Fiscal Year Research-status Report
企業の経営戦略・ビジネスモデルに関する情報開示の要因と効果
Project/Area Number |
20K13645
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大洲 裕司 青山学院大学, 社会情報学部, 助教 (90803453)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 経営戦略 / ビジネスモデル / ディスクロージャー / 財務会計 / 会計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、経営戦略、および、ビジネスモデルに関する企業の情報開示を分析対象として、開示の要因および効果を実証的に明らかにすることである。とくに、有価証券報告書での戦略情報の開示に焦点をあてる。昨今の「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正 (以下、制度改正) によって、企業には、有価証券報告書の中で、企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、および、販売網等などの詳細な情報を開示することが要求されるようになった。制度改正にともなって、どのような特徴を持つ企業が開示行動を変化させ、それによってどのような効果が生じているのかを検証する。
2022 年度の研究活動として、戦略情報開示の決定要因分析が挙げられる。制度改正の適用という外生的なショックに着目し、そこで記述内容を大きく更新した企業は、制度改正の趣旨にしたがい戦略情報を充実させたと解釈する。仮説として、(1) 市場の競争の程度が高い企業は機密コストの観点から戦略情報開示を充実させない、および、(2) 社外取締役比率が高いなどの情報の開示圧力が大きい企業は戦略情報開示を充実させる、の 2 点を提示し、仮説の検証をおこなった。なお、戦略情報開示の充実の程度は、制度改正前後の戦略情報に関する記述の更新度によって評価している (記述の更新度の計算にあたっては、doc2vec を用いて文書の分散表現を取得している)。
分析の結果、(1) 事前の予想に反して、市場の競争構造は記述の更新度に影響を与えているとはいえないこと、および、(2) 事前の予想と整合し、有利子負債比率・社外取締役比率・外国人持株比率などのガバナンスの変数が記述の更新度にプラスの影響を与えていることを発見した。本結果を国内の学会や研究会で報告し、参加者から、論文化に向けての建設的なコメントを頂いている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第 1 子の誕生にともなって、子の養育に多くの時間を割く必要が生じたため、当初の計画から遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の分析結果を整理し、国内査読誌等に投稿する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で対面での学会・研究会参加の機会が少なかったため、繰越額が生じている。2023 年度には、学会・研究会等の研究交流に積極的に参加する予定である。
|