2023 Fiscal Year Research-status Report
個人投資家志向型企業による企業情報開示に関する理論的・実証的研究
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20K13657
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
酒井 絢美 立命館大学, 食マネジメント学部, 准教授 (00735293)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 株主優待制度 / 個人投資家 / 企業行動 / 日本企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
個人投資家を重視する姿勢をとる企業(個人投資家志向型企業と呼ぶ)に焦点を当てた本研究においては,個人投資家の増加を期待して企業が行う施策の1つとしての株主優待制度を中心とした分析を試みている。本年度においては,前年度に引き続き株主優待制度の導入に企業としてのどのような動機があるのかについて検証した。 第一に,研究計画に基づき,文献調査を実施することによって株主優待に関する研究の過去の成果と潮流を明らかにするとともに,将来の方向性についても提示した。具体的には,株主優待に関する研究については年代ごとに主たる研究方法に変化がみられること,とりわけ実証研究の蓄積が進みつつあるのは主に直近数年であること,および論点に関しても偏重がみられ蓄積の乏しい領域が存在することが明らかとなった。当該分析結果は,株主優待に関する研究に大きな発展の余地が残されていることを示唆している。 第二に,株主優待の実施を日本企業の特徴的な行動の一つと捉え,日本企業の行動特性の発現という観点から実証分析を行った。その結果,前年度に同業種の他の企業が株主優待を行っているほど,企業は株主優待を新たに実施する傾向があることが示された。 これらの研究については,いずれも既に学術誌に投稿中である。そして,前年度および本年度の研究の結果から,株主優待制度の導入が,個人投資家志向型企業における企業情報開示やコーポレート・ガバナンスにどのように関係があるのかといった論点にも今後繋げることができると期待されるが,これらの点についてはさらなる理論的検討が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度において,新型コロナウイルス感染拡大に伴うさまざまな制約のほか,在住する市の規定に基づく濃厚接触者としての待機期間が複数回発生し長期間にわたったこと,および保育園や学校等の臨時休園・休校が相次いだことから十分に研究を実施することが困難であったことの影響が残存しており,進捗としてはやや遅れているが,前年度までの遅れを取り戻しつつあるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては,株主優待制度と企業情報開示との関係性について株主優待制度の企業別・業種別内容まで踏み込むことを予定している。具体的には,ギフト効果仮説に基づき,特に食品に関して焦点を当てることを検討している。 そして,最終年度である2025年度においては,株主優待制度とコーポレート・ガバナンスとの直接的関係の検証も行う予定であり,手法としては理論的研究と実証研究の双方を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症により,いまだ関連する学会や研究会の一部がオンライン開催であったこと等から,次年度使用額が発生した。 次年度以降の使用計画については以下の通りである。まず,本年度も新たな文献やデータ等が公表されていたため,当該文献やデータ等の入手を目的として,本年度から継続して次年度も書籍・雑誌等の文献およびPC関連機器の購入を計画している。また,本年度から関連する学会・研究会の多くが対面開催に変更される見込みであり,調査や学会発表,研究会への参加等に伴う旅費や参加費・研究成果発発表費用等の諸費用も前年度以上に生ずる予定である。同様に,最終年度である2025年度に関しても,研究・情報環境維持のために必要な消耗品費,調査や発表のための旅費および参加費・研究成果発発表費用等の諸費用が生ずる予定である。
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