2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13660
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
笠岡 恵理子 大阪成蹊大学, 経営学部, 講師 (40755815)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際財務報告基準 / ASEAN / コンバージェンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、IFRSを適用する国が増加する中、ASEANにおいてIFRSの適用およびコンバージェンスが利害関係者により有用な財務情報を提供しているのかについて明らかにすることを主たる目的としている。そのため、まずASEANにおいてIFRSとコンバージェンスを行っている国であるインドネシア、ベトナムおよびタイにおけるコンバージェンスの状況、これらの国における文化的および社会的特性が会計基準の設定に与える影響、およびIFRSとの差異が財務諸表に与える影響について検討していく。 研究初年度である2020年度については、インドネシアにおいて、インドネシア会計基準とIFRSのコンバージェンスに伴って情報の非対称性が低減され、より有用な情報が投資家を含めた利害関係者に対して提供されているのかについて検討を行うため、IFRSとのコンバージェンスと市場流動性の関係について実証研究を行った。この論文については、2021年3月におけるInternational Conference on Economics, Business, Tourism, and Social Sciencesにおいて発表を行っている。 また、タイにおけるIFRSの適用状況についても研究を行い、タイにおいて自国の会計基準とIFRSをコンバージェンスしている理由について検討を行った。タイについては、タイ会計基準とIFRSに大きな差異はないが、会計職法において会計基準をタイ語で策定することが規定されており、IFRSをタイ語に翻訳し、タイ会計士連盟の定めた適正手続きを完了するために一定の期間が必要であることから、一部を除き、IFRS発効日から約1年遅れでIFRSに準拠したタイ会計基準の適用を行っていることが明らかとなった。この論文については、2021年2月における大阪成蹊大学紀要第7号に掲載を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度においては、ASEANにおいてIFRSとコンバージェンスを行っている国の1つであるインドネシアを中心に研究を進めていった。研究の内容としては、インドネシア会計基準とIFRSとの差異および財務諸表への影響の研究、およびインドネシアを訪問し、インドネシア会計基準とIFRSとの相違点、実務的視点からインドネシアにおけるIFRSの強制適用が難しい理由、日本企業がインドネシアに進出する際に直面する問題点、インドネシアの企業を監査する際に日本企業と異なる点等についてインタビュー調査を行う予定であった。 インドネシア会計基準とIFRSに関する研究については、国内において収集可能であったインドネシアにおける上場企業のデータを用いて、インドネシア会計基準とIFRSのコンバージェンスによって、より有用な情報を利害関係者に対して提供できているのかについて実証研究を行い、International Conference on Economics, Business, Tourism, and Social Sciencesにおいて学会発表を行った。インタビュー調査については、コロナによって海外渡航が難しくなり、延期せざるを得なくなった。そのため、可能であれば2021年度に訪問する予定としている。 その他として、タイにおける政治や経済に触れた上で、タイにおける会計に関する基本事項およびIFRSの適用状況について研究を行い、大阪成蹊大学紀要第7号において論文の掲載を行った。そのため、一定の成果があったと考えられ、研究計画はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度については、2020年度に行った研究であるインドネシア会計基準とIFRSとのコンバージェンスによる財務情報の有用性への影響に関する研究について、実証研究の結果をより頑健なものとするため、さらに検討を行った上で、論文掲載に向けての手続きを行っていく。また、タイについても引き続き研究を行い、タイ会計基準とIFRSの差異が財務諸表に及ぼす影響について検討を行っていく。また、ベトナムについては、ベトナム会計基準とIFRSとの差異が大きいことが想定されることから、ベトナムにおけるIFRSとのコンバージェンスにおける経緯およびIFRSとの差異について詳細に文献レビューおよび調査を行った上で、IFRSとの差異が財務諸表に与える影響について実証研究を行っていく。 インドネシアおよびベトナムについて、インタビュー調査を行う予定であるが、昨年同様にコロナの影響が懸念され、渡航が難しい場合が想定される。そのため、オンラインにて調査を行う等代替的方法を検討する必要があると考える。
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Causes of Carryover |
2020年度については、インドネシアにおいてインタビュー調査を行う予定にしていたこと、また海外にて学会発表を行う予定であったことから、旅費やインタビューに対する謝金として支出を予定していたが、コロナにより渡航が難しくなり、これらの計画を実行することができなかった。そのため、2021年度において、コロナの状況が改善され、可能であればインドネシアに渡航し、インタビュー調査を実施したいと考えている。
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