2020 Fiscal Year Research-status Report
Resisting the matrix of domination : French descendants of postcolonial migrants in search of coalitions
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20K13667
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
田邊 佳美 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (40869880)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス郊外 / 女性 / 旧植民地出身移民 / インターセクショナリティ / 反人種主義 / フェミニズム / 反貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスにおける旧植民地出身移民とその子孫が、人種主義・貧困・性差別など多様な社会的抑圧に抵抗する当事者/非当事者として、「連合(政治的な連帯)」を実現する可能性/非可能性を明らかにすることを目的とする。 初年度である2020年度は、すでに協力関係を構築してきたパリ郊外の女性団体において参与観察と聞き取り調査を主とした現地調査を実施する予定だったが、新型コロナ感染症の影響から当初予定していた計画の変更を迫られた。結果的に、継続的に調査の機会を探りつつも、遠隔で収集できる資料および先行研究の分析に専念した。 研究遂行に際しては、在仏の研究協力者と2020年8月・9月・11月、2021年2月・3月にZoomでの遠隔会議を計5回実施し、本研究のテーマに深く関わる争点として、とりわけ「人種」や「インターセクショナリティ」概念をめぐるランスの学問的・政治的状況やマイノリティ研究者をめぐる社会・政治的状況について検討した。2000年初頭以降のフランスでは、旧植民地出身移民の子孫であるマイノリティ研究者が「当事者」としてフランスの移民研究に参入し、統合主義的だった移民研究の認識論的転回を主導したが、さらに2010年代以降には、新たなマイノリティ研究者の世代が登場し、「人種」「ジェンダー」「セクシュアリティ」など、フランスではタブー視されてきた概念を、伝統的な社会学概念である「階級」概念などと交差させ、インターセクショナリティの視点から移民研究にさらなる転回をもたらした。この点については2021年度も分析を継続し、学会・研究会等での共同発表や共著論文の執筆へとつなげる予定である。また、左派も含む共和主義者の大学界・政治界でのバックラッシュを引き起こしたこれらの動きが、調査地の女性団体においてもどのように認識されているかを考えることが今後の課題として浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の流行により、予定していた2020年度の夏期および冬期の二度の調査が不可能となった。本研究においては、フィールドワークによる参与観察と聞き取り調査が研究遂行に不可欠であるため、研究計画に遅れが生じた。さらに、現地の調査協力者らが運営する市民団体も、感染症の状況下で長期間にわたって活動停止となったため、遠距離で様々な資料を得ることも難しくなり、遠隔でも入手可能な資料の収集、先行研究の検討や収集した資料の分析が主な作業となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も上記感染症の影響で夏期フィールドワークの実現が見込めないため、調査に関しては最低でも1年半の遅れが生じることとなる。またより重大な課題は、調査を予定していた市民団体の活動停止から1年半以上経ち、高齢者も含むメンバーの継続的な参加や今後の活動計画が不透明となったことにある。窓口となっている団体の主要メンバーと緊密に連絡を取り、調査が可能になった段階で、当初の調査計画をどのように変更するかについて見極める予定である。現時点では未確定であるが、場合によっては別の調査地を探す可能性も考慮する必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で長期海外調査が実施できず、旅費の支出がなかったため差額が生じた。長期調査を実施できない代わりに、先行研究の分析を進めるため購入した書籍代や、研究協力者との遠隔会議のために購入した機材のため、当初計画よりも物品費の支出が増えたが、それでも当初予定した支出額合計よりも少ない支出額となった。 2021年度は冬期に調査を再開できると見込み、旅費の支出を想定している。また、調査を断念する夏期については前年度同様、先行研究や前年度に収集した資料の分析、それをもとにした論文執筆を進めるつもりで、そのための物品費および人件費・謝金として予算を使用する予定である。
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