2021 Fiscal Year Research-status Report
Resisting the matrix of domination : French descendants of postcolonial migrants in search of coalitions
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20K13667
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
田邊 佳美 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (40869880)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス / 旧植民地出身移民 / 女性 / インターセクショナリティ / 反人種主義 / 連帯 / 言語実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスにおける旧植民地出身移民とその子孫が、人種主義・貧困・性差別など多様な社会的抑圧に抵抗する当事者/非当事者として、「連合(政治的な連帯)」を実現する可能性/非可能性を明らかにすることを目的とする。 第2年度となった2021年度は、昨年度に引き続き、新型コロナ感染症の影響で実地調査を行う見込みが立たなかったため、2012年から2020年にかけてすでに収集した本研究の調査地のデータを改めて分析・理論化する作業や、オンラインでの資料収集・調査・研究交流を実施した。 その結果として、まず「フランス・旧植民地出身移民女性の抵抗と言語――〈声〉を取り戻すための演劇制作」という題目での研究報告と論文刊行に至った。論文では、旧植民地出身女性を中心とした運動空間において、多様な参加者の対話と共同作業を通した演劇の製作プロセスと演劇空間における言語実践を通して、付与されたスティグマと抑圧から脱し自らを再定義する「精神的独立性(autonomie mentale)」が確立され、連帯も後押しすると同時に、政治的な発言の正当性を得るという意味での「政治的独立性(autonomie politique)」の確立には至らなかったことが明らかになった。第二に、本研究に関わる重要な争点として初年度から検討中の、「人種」と「インターセクショナリティ」概念をめぐるフランスの学問的・政治的状況の把握に引き続き勉め、資料収集に加えてフランスの研究協力者と2度のZoom会議(10月および1月)を実施し、11月には該当の問題に詳しい研究者を交えてのパリ第8大学の研究所LEGSでのワークショップにオンライン参加(研究報告も行なった)、次年度に論文としてまとめるための有益な情報を入手することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の流行により、予定していた2021年度の夏期および冬期の調査実施が不可能となった。フィールドワークによる参与観察と聞き取り調査は本研究の計画の軸となっていたため、研究計画の修正により現地調査に行かずとも取り組める新たな課題に取りかかってはいるものの、調査に基づいた研究の範囲に関しては大きく遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の夏期調査に関しては、状況を見極めて実施予定である。調査を予定していた市民団体が感染症の影響を受けて活動を停止してから2年以上がたち、比較的若い世代のメンバーは別の活動に軸を移しつつある。現地調査のさいに、それらのメンバーの活動場所を新たな調査地とすることができるか検討したいと考えている。また同時に、研究計画の修正により新たに取り組むこととなった、「人種」と「インターセクショナリティ」概念をめぐるフランスの学問的・政治的状況についての分析については、研究協力者その他の研究者との対話やインタヴューを実施することで考察を深めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で長期海外調査を実施できず、旅費の支出がなかったため差額が生じた。長期調査を実施できない代わりに、修正・追加した研究課題に関わる分析を進めるための文献やオンラインでの研究報告やミーティングを円滑にするための物品を購入したため、当初計画よりも物品費の支出が増えたが、それでも当初予定していた支出額合計よりも少ない使用額となった。 2022年度は、可能であれば夏期に調査を再開できると見込み、前年度に実施できなかった調査旅費分の支出を想定している。
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