2021 Fiscal Year Research-status Report
テロリズム後のフランス・ムスリム移民第二世代のアイデンティティ変容
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20K13679
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
村上 一基 東洋大学, 社会学部, 准教授 (00822420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス / 移民 / 移民第二世代 / 郊外 / イスラーム / アイデンティティ / テロリズム / 社会的排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスにおいて若者のイスラーム過激化やホームグロウン・テロリズムが大きな社会問題のひとつとなる一方で、テロリズムに対する「国民の団結」はマジョリティとマイノリティの「断絶」を生じさせ、イスラームに対する恐怖心や警戒心、さらにはムスリム移民第二世代に対する否定的まなざしを強めている。本研究は、テロリズム後のこれらの社会の動きが、日常的に宗教を実践する「過激化していない」ムスリムの若者のアイデンティティに及ぼした影響を明らかにすることを目的としている。 研究2年目も、新型コロナウィルス感染症の影響でフランスに渡航できず、予定していた現地調査を実施できなかった。そのため、3年目以降の調査に向けて分析枠組みや比較の視点を精緻化した。特にフランスにおける他の出自の移民第二世代のアイデンティティとの比較検討や、日本におけるイスラームと地域社会の関係を検討した。その結果、中国系移民第二世代などは主流社会で評価される文化を、その価値基準を内面化した方法で維持し主張していることを明らかにすることで、ムスリム移民第二世代のアイデンティティにおいては植民地主義の背景や社会におけるまなざしが重要な要因となっていることが明確になった。また、日本ではモスクなどが地域との連携や社会活動への積極的な参加を行っており、日仏でのムスリムの人数や歴史、宗教団体の位置付けとそれぞれの関係性、社会からのまなざしなどの差異から、モスクなどの宗教団体や第二世代の活動の違いが生じることなどの比較枠組みを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、フランスでの現地調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大が収まらず、現地調査を行えなかった。そのためインターネットを通した情報収集や資料収集・分析を行いつつ、並行してフランスのムスリム移民第二世代の特徴を社会学的に明確にするための作業を日本での調査を通して行った。日本ではモスク関係者や外国にルーツを持つ若者へのヒアリングなどを対面ならびにオンラインで行った。 また昨年度に引き続き、調査実施予定先の情報をインターネットで入手し、必要に応じてインフォーマントとSNSを介してやり取りをし、現地の情報を収集した。オンラインでのフォーマルインタビューについても引き続き検討したが、調査先に赴くことができていない期間が長引いているため、実現には至らなかった。 コロナ禍において、自治体などはオンラインでの情報発信を強化したが、対象者との関係性から市民団体や宗教団体のなかにはオンラインで十分な発信をしていない団体もあるため、現地調査を再開し、実際の状況を把握する必要があることも明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査は、夏以降に複数回実施する予定である。調査では、研究計画の予定を一部変更し、まずは自治体や市民団体、宗教団体への聞き取りを行い、コロナ禍での変化について明らかにしていく。特に現地の社会的課題の変化、移民第二世代やイスラームに関する状況の変化や新たな課題・可能性などについて考察する。その結果を踏まえ、研究計画で予定していた調査先での若者へのインタビューを行っていく。
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Causes of Carryover |
フランスでの現地調査を予定していたが、今年度も新型コロナウィルス感染拡大の影響で、フランスへの渡航ができず、現地調査を行えなかった。翌年度は、感染状況を適切に判断しつつ、調査の遅れを挽回するために、次年度使用額で1回の現地調査を実施、次年度請求分とあわせ計2回の現地調査を行う。
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Research Products
(3 results)